光光太郎の趣味部屋

Twitter感覚で趣味や心情、言いたいことをつらつらと。

漫画:古見さんは、コミュ症です。 ~気遣いのヒーロー~

こんにちは。

光光太郎です。

 

今日はちょこっと漫画をご紹介。週刊少年サンデーで連載中の

 

古見さんは、コミュ症です。

 

です。最新14巻が発売中の人気コメディ?漫画。

古見さんは、コミュ症です。(1) (少年サンデーコミックス)

 今回書くことは大体1話を読めば分かることなのでWEBサンデーの試し読みをするのがおススメです。

sunday.tameshiyo.me

なぜ紹介するか?それは今作が「日常に根差した正義=優しさ」を絶妙なバランスで描いているからです。

 

 

■コミュニケーション漫画

今作のあらすじをWEBサンデーから引用すると…

古見さんは、コミュ症です。なので人付き合いがとても苦手です。でも友達が欲しい古見さん。人の気持ちを察するのが得意な只野くんが友達になり、その伝手で少しずつ友達がふえ、高校生活がだんだん楽しくなってきました。2年生になった沈黙の美少女・古見さんのコミュ症コメディー!!

主人公であるコミュ症こと古見硝子(こみ・しょうこ)が、テストも身体能力も全て平均値である只野仁人(ただの・ひとひと)と友達になったことをきっかけに、様々な人物と友達になっていこうと奮闘するお話です。*1

 

 

つまりこれはコミュニケーションについてのお話なんですよ。

古見さんは男女問わず振り向いてしまう程の超絶美人。無口で凛とすました雰囲気に皆やられてしまい「神」と敬われていたり。その為周りからは羨望の眼差しを向けられるものの、一歩距離を置かれています。しかし実際は、人前では緊張しすぎて喋れなくて、誰かと一緒にいたくとも話しかけることが出来なかった…ずっと孤独だったんですね。

周囲の人々は古見さんを嫌っている訳ではなく「凄い人だ」という先入観をもっているだけ。その先入観が、古見さんを傷つけることになってしまった。

 

古見さんは、コミュ症です。(2)【期間限定 無料お試し版】 (少年サンデーコミックス)

とある方法を取る以外は殆ど話せない古見さん。飲食店では凝視された店員が勝手に察してメニューを作ってくれることが殆ど!

 

これは別にコミュ症限定の話ではない。主観と客観の違いからくるコミュニケーションのズレという、普遍的で身近な話なんですよ。そしてそれは、誰もが悪くなくとも誰かを傷つけることもあると。

 

 

■ 日常の正義、身近なヒーロー

そんな彼女を救う、初めて友達になるのは「普通の人」である只野くん。

彼は何をしても普通で、中学時代に厨ニ病になるほどオーソドックスな人物だと言われる。クラスでもさほど目立っていない。普通の人なのだ。だからこそ彼は、普通に誰かを気遣うことが出来る。

ひょんなことをきっかけに古見さんがコミュ症であると知り、黒板で筆談を始める2人。古見さんから秘密を打ち明けられた彼は、謝罪して去ろうとする古見さんへ「言葉」を返す。

 

sunday.tameshiyo.me

 

 「はい」と答える古見さん。その後2人は黒板を埋め尽くすまで筆談=会話を続け、友達になります。只野くんは古見さんの「友達100人作り」を手伝っていくことになる…。

 

正直ね、泣きました。こんな見事な演出があるかと。

本音をさらけ出した不器用なコミュニケーションが、ささやかな願いが他者へ通じた瞬間。苦しんでいる人を助けようと一歩踏み出した(気の利いた)勇気。ヒロイックな行為は日常でも描けるんだとね…。そしてこれらを「普通の人」の象徴にやらせる意義。まぁ話が進むごとに「気遣い」が超能力レベルに達するんですが、これは「信じたい綺麗事」の寓話でもあるので、これでいいのだ!!

 

やたらと重い感じに書いてますが、実際読んでみると非常に軽快。只野くんと、そして2番目に友達になる長名なじみ(性別不詳)らと共に、一癖も二癖もある人物達と友達になっていく様子を、ギャグ8割感動2割という感じに構成しているので実にバランスがいい。構成の巧みさは特にコミックスで如実に分かるでしょう。

 

古見さんは、コミュ症です。(3)【期間限定 無料お試し版】 (少年サンデーコミックス)

kindleでは無料お試しもやってるぜ!

 

■極端さと多面性

コミュ症の古見さんが誰かと友達になるのは簡単なことではありません。あがり症な上理さん、ヤンデレな山井さん、厨ニ病な中々さん、おねぇさん気質な尾根峰さん、ギャルの万場木さん…そもそも誰もが個性を持っているのだからすんなりとコミュニケーションを取れるわけはないのです。時には個性が災いして事件を起こし心を傷つけることも。でも、だからと言って個性「だけ」が性格の人なんているわけもない。誰もが多面性を持っているからこそ、人付き合いは面白い。

 

面白い変化を遂げるのは、古見さんが好きすぎる山井恋(やまい・れん)。最初は行き過ぎた思い故に邪魔な只野くんを監禁するなどした彼女ですが、自分のイメージではなく現実の古見さんと向き合い話した結果、友達になりました。

その後もヤンデレ行為は尽きないものの(巻を追うごとに作者がエスカレートさせており、少年誌でやるのはギリギリな場面も…)段々と異なる面が見えてくる。意外と博識だったり自分磨きに余念が無かったり、それこそ古見さんが嫌がり傷つくようなことを控えるようにしたり。

この漫画はとにかくキャラクターが多いのでここまで細かく描かれるのは稀なんですが、そんな枠に山井さんを当ててるというのがいいなと思うわけで。まぁ難しい話は抜きにして、とにかく縦横無尽に動きまくる山井さんは見ていて本当に面白い。

 

古見さんは、コミュ症です。(10) (少年サンデーコミックス)

今注力されている万場木さんと友達になるのは10巻。

適切な気遣いという、現実の絶対正義。ヒーローを産むからこそヒーローである構図。泣く。

 

電子書籍向き?

 今作のコマ割りというかページ構成は非常に独特だ。

 

・1週の連載の中で複数の小話を入れる

・1ページ毎に何かしらオチが付く

・横長4コマで構成されたページが多い

・見開きを利用した演出はここぞという時だけ

 

ちょっと読んだだけでもこの4つの特徴が分かるだろう。スマホ電子書籍で読むことを意識しているのではないだろうか?WEB上でなく週刊誌で連載していることを考えると挑戦的だ。しかも1ページ毎表示の方がドラマチックになっている場面もある。

 

例えば1話のこのシーン。紙媒体だとこう見えるが

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スマホkindleで1ページ毎の表示だとこうなる。

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感じ方は人それぞれだとは思うが、私は1ページ毎表示の方が只野くんの表情や返し言葉が印象深く目に飛び込んできた。「漫画における筆談」という、静的かつジャンプカット的な表現だからこそなのかもしれないが。

 

こういったいページ表示の工夫を凝らした漫画だと、現在WEBで連載している「キン肉マン」や「働かないふたり」が挙げられるだろう。前者については作者が言及していたし、後者はそもそも縦読みである。

 

wpb.shueisha.co.jp

kuragebunch.com

 「働かないふたり」も「日常に根差した正義=優しさ」のお話だと思う。

 

■〆

どうやってもブログを短く終えることは出来ない性分なのか…!そろそろ〆です。

コミュニケーション漫画であることや気遣いの尊さ正しさについて書いてきましたが、そういう視点を抜きしてギャグ漫画ラブコメ漫画としても無類に面白いのだ!そしてとにかく美麗作画に酔える!

 

正直ギャグの構成は天丼気味だがあまりのテンションの高さ極端さに笑ってしまうし、古見さんの筆談は笑いも感動も生んでくれる漫画だからこそ出来る表現で最高だし、古見さんと只野くんの関係性も萌える(終わらない焦らし地獄)。

 

とにかく!kindleの試し読みかオダトモヒト先生のTwitterをフォローして美麗作画を一見して欲しい!是非!

 

twitter.com

*1:※因みに登場人物はほぼ全て「名は体を表す」になっています。コミュ症だから、こみしょうこ。みんなの幼馴染だからおさななじみ。この他にもよく考えたなと膝を打つ名前が目白押しで、お気に入りは米谷忠釈(こめたに・ちゅうしゃく)。なんにでも※付き注釈を挟んでしまうやつだ。

映画:魔人ドラキュラ ~原作イメージを塗り替えた紳士魔人~

こんにちは。

光光太郎です。

 

今回は最初期のモンスター映画であり「小説実写化作品」でもある

 

魔人ドラキュラ

 

の感想を書いていきたいと思います。公開は1931年!90年近く前!!

 

魔人ドラキュラ [Blu-ray]

 

 

■「魔人ドラキュラ」以前のドラキュラ

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ドラキュラと言えば十中八九こんな姿を思い浮かべるでしょう。

タキシードとマントを身にまといオールバックで凛々しく決めた紳士…その実態は生血を吸う吸血鬼だった…。姿形だけでなく「紳士」であることもすぐ連想できるのではないでしょうか。これはいつ出来上がったのか?

 

そもそもドラキュラとは小説です。1897年に執筆された「吸血鬼ドラキュラ」はヴラド三世の串刺し凶行をモデルにした怪奇小説。しかしこの段階ではビジュアルイメージはさほど確立されておらず、読者の想像に任せる形でした。ここら辺は「フランケンシュタイン」とも同じですね。

 

その後変身マジック等のギミックが詰まった舞台が数多く上映され、ここで黒マントにタキシードという姿が作られました。この間に「ノスフェラトゥ」というサイレント映画が作られるのですが、原作者に許可を取らずに作っていたのでお蔵入りに…。姿もドラキュラというよりも化物より。しかし影を有効に使った恐怖演出は後世まで影響を残していますね。

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ベラ・ルゴシが確立させた「ドラキュラ」

そして「魔人ドラキュラ」が作られる。ドラキュラ伯爵を演じるのはベラ・ルゴシ。彼こそがビジュアルにキャラクター性を付与させ決定的なドラキュラ像を確立させた。そのキャラクター性とは「異国のミステリアスな紳士」だ。

(因みにドラキュラはトランシルヴァニアからロンドンへと渡るが、結構距離があるのだ)

www.google.com

 

まず「異国」だが、ベラ・ルゴシハンガリー出身で訛りが強いため、劇中では結構独特な英語を話す。「アイアムドラキュラ」と自己紹介する時も「アイッアム、、、ドラッキュラァ」と、やけにタメて話す。人を呼ぶときは「ミスッッタァァ、、レンッフィィィールドゥッ」とタメにタメる。トーキー初期はハッキリと喋ったり独特なセリフ回しだったりする人が多いのだが、その中でも彼は群を抜いている。それでもコメディにならないのは、ベラ・ルゴシの美しい立ち姿の為だろう。

 

魔人ドラキュラ(AR Oリング仕様)(初回生産限定) [DVD]

 

続いて「ミステリアス」。謎の多いナルシストと言ってもいいかもしれない。

そもそも「魔人ドラキュラ」自体がドラキュラの謎、彼が起こしたであろう事件を解明していくという筋書きなので、自然と謎多き人物として描かれている。しかし彼は社交的であり、挨拶や会話は礼儀正しい。ただその中で、明らかに変なことを言ったりするのだ。「死よりも恐ろしいことが、世の中にはあるのですよ」とか「一度も死を知らない割には知恵者だな、ヴァンヘルシング博士?」とか、接すれば紳士なのにどこか変だと…。文言がカッコいいから自己陶酔なのかな?となる絶妙なバランスでもある。この「ミステリアス」な部分が、ドラキュラというモンスター最大の魅力かも知れない。

 

 

最後に「紳士」だが、これはもう前述した通りベラ・ルゴシの美しい立ち姿に由来する。更に言えば「指」と「目」の演技だ。立っている時に添える手は勿論のこと、女性の血を吸う際に力強く広げる指まで表現が込められている。端的に言えば目立つのだ。今作は白黒映画なので、黒装束だと肌が白く目立つ。エロティックに、目立つ。

そして「目」だ。キリリとした目、柔らかい態度の笑った目、そして人を操る時の鋭い目…ドラキュラ伯爵のアップが多いので猶更目立つ。軽薄さなど1mmも感じさせない貫禄ある目…特殊効果として白い光が当てられていると妖艶な光が宿る目…今作は「目」を楽しむ映画でもある。

 

以上の通り、ベラ・ルゴシは演技一発、もっと言えば立ち姿1つで「ドラキュラ」を体現してしまった。90年後の今まで続くイメージを確立させたのだ。更に言えば、彼は「フィクション・モンスター映画」を大ヒットさせた最初期の役者であり、ユニバーサルはこの後に「フランケンシュタイン」や「透明人間」「狼男」とモンスター映画を量産していく。これらの作品がどれほどの派生作品を誕生させただろうか?ベラ・ルゴシの功績は語りつくせないだろう。

ここら辺の話は以前ブログでも紹介したが、Blu-rayに詳細なメイキングがあるのでそちらを是非観て欲しい。

 

bright-tarou.hatenablog.com

 

因みに、ドラキュラと言えば「むき出しの歯」も有名だが、これは1958年に製作された「吸血鬼ドラキュラ」で初めて描かれている。演じるのは我らがクリストファー・リー

吸血鬼ドラキュラ [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [DVD]

 

■サイレント的なトーキー映画

ここからは内容面の話。

今作はトーキー、音が出る映画だが、実際観てみるとサイレント映画的な演出が印象深い。劇伴がほぼないのだ。

 

音楽らしい音楽はタイトルシーンで流れるチャイコフスキーの「白鳥の湖」位で、後は劇中のオーケストラが演奏するものしかない。つまり、殆ど環境音のみで、「夜の子供たちの声」のみで進むのだ。これは恐怖演出にもマッチしており、薄暗い部屋で美女に迫るドラキュラや闇で目を光らせるドラキュラのシーン等で大きな効果をもたらしている。全然音ならないのは正直ちょっと飽きるが、無音だからこその独特な雰囲気が味にもなっているだろう。

魔人ドラキュラ (ベスト・ヒット・コレクション 第9弾) 【初回生産限定】 [DVD]

 

■モンスター映画として魅力的か?

そもそもこの頃には「モンスター映画」や「ジャンル映画」という概念があまり確立していなかったのだからこういう目線で観るのはお門違いだろうが、どうしても「モンスター映画」として観てしまうわけで。

 

では今作は魅力的なモンスター映画なのか?それは否だと思う。原因は明確!弱すぎるオチだ!!!

ドラキュラは狡猾でありスキが無く、学も礼儀も嗜むキャラクターである。にも拘わらず、どう考えても追跡される状況でヒロインをアジトへと連れ込み、追われているのに棺桶に入って眠ってしまう!当然、追い付いたヴァンヘルシング博士に(寝息を立てているところに)杭を打たれて、そのまま死んでしまう!!アホか!!!!!!!!

 

血を吸うシーンを直接見せないのは、まぁいい。当時は検閲がきつかったと聞くし、眠る女性に迫る場面だけでもギリギリだったのかもしれない。

狼や蝙蝠への変身シーンを描かないのも、まぁいい。それをやると面白さというか、ギミック面が強くなりゴシックホラーの雰囲気が崩れかねない。(のちの作品では特撮使ってバンバンやってる)

これら2つが無くてもいいのは、ドラキュラというモンスターの根幹とは微妙にずれているからだ。奴の恐ろしさは前述した通り、紳士を装い人を襲う狡猾さにある。だからこそ、知恵者同士の戦いを見たかったのに…。アホか!!!!!!!!!!

 

では、今で言う所のモンスターはいないのか?それがいるのである。ドワイト・フライ演じるレンフィールドだ。最初期のサイコパス系キャラクターではないだろうか。

彼の狂人演技は圧巻の一言で、かなり極端な演技や台詞回しであるものの、完全に目が向こう側に行ってしまっているのだ。

 

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真ん中がレンフィールドである。一目で分かるこの狂人さ。演技により醸し出される恐ろしさだけでなく、狂わされてしまった者の悲哀もあるので、正にモンスターと言える存在だろう。彼の名演を観る為だけでも今作を鑑賞する価値はある。(狂人役がえらく受けたのか、今後もこういう役回りが多くなる)

 

■〆

さてそろそろ〆だ。

ドラキュラ周りばかり書いてきたが、ゴシックな魅力が詰まりに詰まった美術や衣装も本当に素晴らしい。特にドラキュラ城は最高だ。当時の鮮明でない映像だからこその、暗闇と美術とが混ざり合った映像は堪らない。特撮面で言うと、繋ぎ目が分からない見事なマット・ペインティング合成だろうか。

 

また今作は海外向けに、キャスト総入れ替え同セット撮影のスペイン語版があるのだが、そちらは迫力満点のカメラワークや鏡を叩き割るアクション、更に狂人さ(うるささ)が増したレンフィールドなど、こちらはこちらで見どころが多い。

 

文化史を知る教材の1つとしてBlu-rayを買ってみるのはいかが?1000円きるし。

 

魔人ドラキュラ [Blu-ray]

映画:ダンスウィズミー ~やりたいことやってみようぜ!~

こんにちは。

光光太郎です。

 

映画のアクションシーンとかでつい体を動かしてしまう迷惑な観客が私なのですが、今回は「音楽を聴くと踊らずにはいられない」女性が主人公の映画

 

ダンスウィズミー

 

の感想を書きたいと思います。今年一番楽しい映画でしたよ!

 

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https://www.fashion-press.net/news/41589

 

wwws.warnerbros.co.jp

 

 

 

■鑑賞後ツイート

 

■これぞエンタメ!明るく楽しくキレがいい!

この映画に難しい所は1つもありません。上記ツイートにもある様に「音楽を聴くとミュージカルスターの如く踊り始めてしまう」という設定を活かしたミュージカル風コメディであり、演出もそこに振り切ってます。

 

ノリのいい音楽にのせてアルティメット美人やパワフルガールがキレキレのダンスをして、更にキレのいい編集で魅せてくれる、映画でしか成し得ない快感が楽しめる。最近映画でかかる音楽やそれに合わせた映像には暴力的なまでの「快感マジック」があるなと思ってるんですが(グレイテストショーマン等)、今作も正にそれ。

 

話運びにご都合展開が目立つものの、前半でキャラクターを愛してしまった身にとっては全く関係ない!キャラクター達がエネルギッシュに動いていくのを見るだけで楽しいと思わされている時点で、私の「負け」なのです。ロードムービーへと舵をとってからはもう眼福ばかり。降参!

 

とにもかくにも、笑顔で笑って元気になって、劇場を出てこれる映画なんですよ。これぞ陽性エンタメの極地!やりたいことを、感じたままにやってみようぜ!

 

アクトショー(Act-Show)(ライブ)

踊り始めはこの1曲!

 

矢口史靖監督最新作!

「ダンスウィズミー」の監督は矢口史靖。ある時期に青春を過ごした人々ならだれもが知っている「ウォーターボーイズ」を世に打ち出し、その後も「ハッピーフライト」「WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜」等を監督しています。ポップさと映画的深みを両立させ爽やかな快作を作り続ける、日本を代表する映画監督でしょう。

 

そんな矢口監督の作品を劇場で初めて観たのは前作の「サバイバルファミリー」でした。

サバイバルファミリー

電気が突如消滅した世界。自給自足生活をする祖父母の元へ行き生活させてもらおうと旅をする一家の話で、これが非常~~~~~~~に素晴らしかった…。2017年で一番面白かった映画です。 「もし○○が○○だったら…」というシチュエーションを上手く使うのは「ウォーターボーイズ」から一貫していますね。

ロケや衣装選び、キャスティングがどれも完璧にハマっていたり、心情の積み重ねを活かしたドラマ運びをしたり、しっかりとド派手な見せ場があったりと「映画でどう楽しませるか?」を考え抜いている。それらは「ダンスウィズミー」でも徹底されており、やはり映画として無類に楽しいものになっていたなと。

私の中で矢口史靖監督は、しっかりと「映画を楽しませてくれる」人という印象になっています。

 

三吉彩花やしろ優のマジック

今作は主演三吉彩花のアイドル映画です。

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https://tokushu.eiga-log.com/new/10179.html

とにもかくにも三吉彩花が輝いている。

何が良いって、まずダンスがいい。

彼女が演じる鈴木静香はちょこっとやさぐれてるような、ジト目が似合う人物なのだ。そんな人がふとしたことから催眠術にかかってしまい、音楽を聴くと踊りだすようになってしまう!

www.youtube.com

手足がすらりと長く美しく、体幹もいいのか動きのメリハリが異様に効いたダンスを何度も何度もしてくれる。いい。すごくいい。

 

そして衣装も凄くいい。

前半は動画の様にオシャレでカッコいいOLなのだが、催眠術師を追いかける旅に出かけてからはTシャツにジーパンと一気に格好が野暮ったくなる。つまり、二度おいしいわけだ。スカートを翻す踊りも、ラフな格好でするスポーティなダンスもいい。

 

三吉彩花は今作で「美しいコメディエンヌ」としての地位を間違いなく確立しただろう。う~ん、いい、としか話してないな(笑)。

 

 

そして彼女に負けず劣らず魅力的だったのが、静香と共に催眠術師を追う千絵を演じるやしろ優だ。ものまねタレントで役者本職でないものの、見事なシネマ女優になっていたと思う。「犬猿」のニッチェ江上にしてもそうだが、女性お笑いタレントの方は役どころによってズバリとハマる人が多い気がする。

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https://www.watanabepro.co.jp/mypage/30000019/

さっきっからパワフルだのエネルギッシュだのという言葉を何度も使っているが、今作でそれを担っているのがやしろ優なのだ。なにしろ初登場シーンでは、玉ねぎをまるかじりしている。凄まじいパワーだろ?

 

三吉彩花と比べると体形は真逆で手足も長いとは言えない。しかし彼女のダンスはどれこれもとことん楽しそうで、観ていると自然と笑顔になってしまう。催眠術で強制的に踊らされている静香と異なり千絵はダンサー志望なので、パフォーマンスで誰かを喜ばせることが本当に好きなのだろう。彼女が歌い踊るシーンは「自分が本当にやりたいことを力いっぱいやっている」シーンなのだ。その笑顔に、心動かされずにはいられなかった。

www.youtube.com

しかしやしろ優の映画的コメディエンヌな瞬間は、やはりゴミ収集車に走って追い付きそのまま中に入ってしまうシーンでしょうね(笑)。そんなことあるかいと(笑)。結構長めのカットで追いつくまでを捉えるから猶更シュール。

 

 

まぁとにかく三吉彩花やしろ優の2人が並び立った時のマジックが素晴らしいんですよ。画だけでなく掛け合いでも、お互いの存在を潰し合わずに引き立て合っているんですね。映画はキャスティングが9割とも言われていますが、今作は何よりもキャスティングの勝利ではないでしょうか。

 

 

■やりたいことをやってみよう!

内容の話を全然してないので少しばかり。

 

静香は我慢する人物として登場します。大手有名企業に勤めるものの、どこか自分を抑え周りを気にして生活している。催眠術をかけられてからは、踊ることを必死に我慢している。我慢我慢我慢…それは自分の本心を隠すことです。今作は静香が自分の本心と向き合いそれを上手に出せるようになるまでの物語だと言えます。

 

我慢のタガが外れ踊りだしてしまうと、静香本人にとっては優雅なミュージカルを演じているつもりでも、他人にとっては狂人の凶行にしか見えません。このギャップがコメディ要素でもあるのですが、投稿動画=身もふたもないリアルを見せる演出によって「突然一人で踊り狂いまわりを巻き込もうとする人の恐怖」にもなっている。

顕著なのが、ミュージカルシーンでは成功していたテーブルクロス引きが実際には全部失敗していて料理も何もぶちまけているということ。無理して解放した自己は事故を呼び込んでしまったわけです。

つまりここまでは映像的にもドラマ的にも、静香が行うミュージカルと現実世界とは剥離しているんですね。

 

しかしそれらが一致する瞬間が中盤に、静香と千絵が旅をし始める時に起こります。

ひと悶着が終わって車中で安堵する静香と千絵。静香はこれから音楽を流すであろうラジオを止めようとするものの、止めない。このままでは踊り始めてしまうのに、止めない。そして流れ出すこの曲!

夢の中へ

初めて自らの意志で踊りだす=本心さらけ出す静香。それを見て自分もノリノリで踊り歌い出す=静香の本心を受け止める千絵。

ここで初めて、ミュージカルと現実とがリンクするんですね。心のままにやりたいことをやり、笑顔でそれを一緒にやってくれる友達がいる…泣きました。「サバイバルファミリー」に続いて、望んだことをし出す瞬間が本当に素晴らしいですよ。正直これ以降はドラマ的な大盛り上がりはそんなにないんですが(笑)、ここから2人のわらしべ長者的なロードムービーが始まるので全く問題なし!

 

■〆

さてそろそろ〆です。

誰が見ても元気になれること間違いなしな、アルティメット美人とパワフルガールの珍道中ムービーとして本当におススメです!舞台でもなくTVでもなく映画だからこそ出来るキレのいいミュージカルシーン編集には体も心も乗せられてしまいますよ。

あ、あとあの結婚式も最高ね!バッチこーーーい!!!

 

広瀬すず松岡茉優、土屋太鳳に続いてまたもや応援したい女優が増えました!三吉彩花やしろ優、応援していくぜ!!!

 

www.youtube.com

ダンスウィズミー (オリジナル・サウンドトラック)

 

 

 

映画:よこがお ~ごめんよ池松~

7月がキングクリムゾンされた当ブログへようこそ。

光光太郎です。

 

とあるαブロガーのツイートにR.I.Pされてしまい、精神を立て直すためにサクッと記事をあげてみようと思いましてて。今キーボードを叩いていますよ。

 

というわけで今回は深田晃司監督最新作、なんと日仏合作な

 

よこがお

 

の感想を書いていきたいと思います。天気の子とかスパイダーマンもいつか、書く、書きたい…(笑)。

 

yokogao-movie.jp

 

 

■これぞ映画だ!過去作観たいぜ!

深田晃司監督作と言えば「淵に立つ」が有名ですが、私は1作も観たことが無く…。しかし今作を観て「過去作を追いたい!」気持ちと「もう2度と関わりたくない」気持ちの両方を抱いてしまいました…。

 

何故追いたくなったか。

今作は総合芸術としての映画だったからなんですよ。撮影、画面レイアウト設計、編集、物語構成、髪型&衣装、照明、カラーコントロール、音楽、演技、キャスティング…全てが計算し尽くされ「とある気持ち」を抱かせるように集約されていくんです。

 

映画で出来る表現、ギミックの数々を使いこなして(というよりもギミック優先で)鑑賞者の気持ちをコントロールするという手法…これはヒッチコック作品ですよ。照明で顔が真っ暗とか、もう正しくでしょう。

 

そしてヒッチコック作品と言えば、感情を操る暴力的な映画でもあるわけです。これこそが、2度と観たくないと思わせる要素。

 

■これぞ映画だ!2度と観たくねぇ!!

前述した、映画表現の全てを使って抱かされる「とある気持ち」とは「嫌な気持ち」なんです。しかもまた脚本が見事でご都合主義的な展開がほぼ無く、誰もが最善を尽くそうとした結果であり、自分の心に従った結果であると。

 

だからこそ、最悪な状況を突きつけられた時に展開的に逃げ場が無く、観客としても映画館で観てるから付き合わざるを得ないわけで…非常にしんどい=最高な映画体験でした。

 

最悪状況はどれもこれも身近なもの。「人のためにのしっぺ返し」「マスゴミ」「悪魔の証明」「無駄な努力」と、誰もが1度は経験があるでしょう。いや、経験がなくとも強制的に感情移入させられているので、映画表現のボディブローによって嫌な気持ちにさせられますよ。

 

深田晃司監督作、追いたいけど、追いたくない!!!

 

■ごめんよ池松壮亮

世の中にはキャスティングだけでストーリーを語る映画というのがあります。そう、池松壮亮ですよ。彼が冒頭で髭面影チャラ男として出てきた段階で「あぁまたこういう池松か…」と。また誰かれ構わずセックスするような奴かと!!!「鉄人28号」に出てたのによ!!

 

鉄人28号 デラックス版 [DVD]

ショタの語源は「鉄人28号 太陽の使者」だぞ!

 

紙の月

私の中で池松壮亮のイメージが確立した1作

 

万引き家族

ポッと出でもしっかり̪シモ役の池松壮亮

 

かと思いきや、彼は全く悪くなかった!!むしろ被害者だったのだ!!!

確かにチャラい。チャラいが、彼も自身の痛みを誰かに癒してほしかっただけなのだ…。なのに、なのに私は初登場から彼を嫌ってしまった…。

 

ごめん、ごめんよ、池松壮亮…。(でも絶対に意識的にやってるよね)

 

■〆

さてそろそろ〆だ。

このクソ暑い中、逃げ場のないひんやり展開地獄に向かってみては?エンドクレジットまで怖いぜ!

 

www.youtube.com

 

映画:きみと、波にのれたら ~七転び八起きは波及する~

こんにちは。光光太郎です。

 

今年は有名監督作品、有名スタジオによるアニメ映画の連発が続く!というわけで今回は「夜明け告げるルーのうた」「夜は短し歩けよ乙女」の湯浅政明監督による新作

 

きみと、波にのれたら

 

の感想を書きたいと思います。初夏にピッタリなデートムービー…か…?

 

kimi-nami.com

 

公式ビジュアルストーリーbook きみと、波にのれたら (コミックス単行本)

 

 

www.club-typhoon.com

毎度のことですが、ナガさんの感想記事で深く深く解説されているので、是非読んでみてください!

 

■感想後ツイート

 

湯浅政明×吉田玲子

湯浅政明監督は前述した2作以外にも「ピンポン THE ANIMATION」「DEVILMAN crybaby」「アドベンチャー・タイム」といったアニメ作品も手掛けています。彼と、彼が率いるサイエンスSARU作品の特徴はFLASHを使用していること。

FLASHと聞くと2000年代初頭インターネットを蹂躙した「フラッシュ動画」等が思いつきますが、サイエンスSARUでは高クオリティ(3次元的にグリグリ動く)かつ効率的な描画手法として取り入れているようですね。

 

 

vimeo.com

サイエンスSARU - Science SARU

 

私が湯浅監督を知ったのは「夜明け告げるルーのうた」。初見時は受け止めきれませんでしたが、Netflixで配信された時に見返してみたら号泣…。「夜は短し歩けよ乙女」も摩訶不思議なアニメーションの世界にどっぷりと浸れます。

極力線を少なくしたひょろ長いキャラクター達が縦横無尽に動きまくる…2作とも動きそれ自体がカタルシスを産むアニメーション作品でした。特にルーは「動き始める」瞬間からのタイトルシーンが最高!泣いた!

 

作劇上の特徴としては、良きにせよ悪きにせよ観客の心情を暴力的にかき乱す展開が多いことでしょうか。画面に没入させキャラクターへ感情移入させるものの、その感情の振れ幅が極端というか…幸せは幸せ!泣きは泣き!イラつきはイラつき!!と…ここまで喜怒哀楽を呼び覚まされる作品は中々ないですよ。

 

夜明け告げるルーのうた

夜は短し歩けよ乙女

 

また、脚本にはあの、あの吉田玲子が参加。ルーは勿論のこと、昨年の超絶大傑作「若おかみは小学生!」をはじめ、「映画 聲の形」「リズと青い鳥」「ガールズ&パンツァー」等の傑作を数多く手掛ける、今最も勢いのあるアニメ脚本家の方です。

 

全作追ってはいませんしボンクラからソフトストーリーまで幅広く手掛けているので特徴を捉えるのが難しいですが、恐らく「最小の台詞で豊かな表現を産む」ことに長けているのではないでしょうか。ガルパンに顕著ですが、多種多様なキャラクターが登場するものの各々が魅力的に立っているんですよね。湯浅監督と組んだルーでも数多くのモブキャラがいますが、特徴づけられたアニメや美術も相まってそれぞれ目立っていました。

 

bright-tarou.hatenablog.com

聲の形は最高ですよ

 

まぁ何はともあれ、湯浅政明監督と吉田玲子脚本のタッグとなれば、そりゃ観に行かないわけがない!「ルーと比べればマイルド」なんて評判もありますが、なかなかどうしてかき乱される話でしたよ。

 

■シンプルな物語&アニメーション

監督もインタビューや公式サイトで語られている通り、今作の物語はシンプルな恋愛もの。ガール・ミーツ・ボーイからの恋愛、恋人の喪失、そこからの復帰という、実に分かりやすい構成にもなっています。基本的に主人公であるひな子視点で進むのでお話もブレず、一直線に進んでいく印象。メインの登場人物もひな子、その恋人の港、港の同僚のわさび、港の妹の洋子の4人しかおらず、情報過多になりがちな湯浅監督作品らしからぬ、見やすい話運びでした。

 

愛が生まれ、喪失したものの依存してしまい、そこからどう生きていくのか?

恋愛ものとして語られるものの、家族や友人、ペット、生き物以外の宝物を無くした場合にも当てはめられる、誰もが共感できる物語でしょう。ここら辺はルーや聲の形にも通じる部分ですが、心情ドラマをひな子と港の関係性に絞ったことで非常に分かりやすくなっていました。

 

取っつきやすくなったのは物語だけではなくアニメーションも。脳味噌が追い付かない程の摩訶不思議アニメーションは鳴りを潜めた代わりに、日常の所作に着目した細かくも豊かなアニメーションが全編渡って描かれていました。

 

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ガスバーナーを付ける、珈琲を入れる、包丁を入れる、物を食べる、手をつなぐ…アニメーション自体もとても細かく描写されていて引き込まれますし、誰もが経験のある動作にキャラクターの感情を乗せることで物語を語っているわけです。

 

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動き自体は単純で線も少ないものの、指の形、動かし方、服のはためき、それに伴う全身の動き、彼らを包む自然の描写…それらをあますことなく描画しているんですよ。だからこそ、実写アニメ問わず見飽きている様なシーンの1つ1つに引き込まれてしまう。シンプルでありながら全く飽きないんです。

 

最近は邦画でも「プロメア」「海獣の子供」といった壮大なアニメが多かったですが、こういった身の回り半径1mの豊かな物語というのもいいですし、それをあの湯浅監督が作ったというのは面白い状況ですね。

 

 

■恋の幸せ、依存の地獄、人生賛歌

今作の白眉は何と言っても前半の連続デートシークエンスでしょう。

ひな子と港が歌う「Brand New Story」に乗せて、デート!デート!デート!甘ったるいデート!リア充になっていくデート!!笑い合いながら歌う「Brand New Story」に乗せてのデート!!!非リアオタクには非常に辛いシーンでした…思わず「あまーーーーーーい!」と言いそうになりましたよ(笑)。劇中でも言ってくれますけど(笑)。

 

プラトニックな恋愛描写だけでなく、性的関係性を穏やかかつ確かに描いているので、20歳近い若者のリアリティある恋愛描写になっていましたね。鎖骨から上のみ描かれた2人が透明感あるシーツに包まっている、どうみてもそうとしか思えないシーンの後はキスが多めになるのとかはもう言い訳出来ないでしょう。ここら辺から両者ともに声がキャッキャしてきますね。

 

非リアオタクとしては非常に辛く劇場から逃げ出したくなりましたが、これ以上ないほど幸せなシーンだからこそです。むしろアニメだからこそ、戯画化された理想的な恋愛描写だと割り切れたのかもしれません。(見終わった後に港視点でこのシーンを見ると泣いちゃうだろうな)

 

realsound.jp

ここらへんはこの記事に詳しい

 

そんな幸せをどん底の絶望へと反転させるのが中盤の喪失&依存のくだり。このかき乱し加減がザ・湯浅監督って感じです。

海で亡くなってしまった港は、なんとひな子が「Brand New Story」を口ずさむと水中に現れるようになった!しかし港の姿はひな子にしか見えないので、周りからは「水に話しかけるやばい人」扱いされてしまう…。

片寄涼太 × 川栄李奈 きみと、波に乗れたら ボイス付き スナメリ ぬいぐるみ

180cm位あるスナメリのビニール風船人形に水をパンパンにつめて町を歩いているので、誰がどう見てもやばい状況に。ひな子視点中心であることが更に追い打ちをかけます。もしかしてこれは、港の死にショックを受け過ぎたひな子の幻想なんじゃないかと…。

 

周りからどう思われようが自分を貫くというのは美談にもなりますが、今作では「亡くなった恋人に依存し続ける」ようにしか描かれません。それこそ、ひな子が港の幽霊に取りつかれ純粋な狂気に飲み込まれる、ホラーの様に見えてしまいます。ひな子の幸せを共有したはずの観客ですら、ひな子を信じられなくなる…辛すぎる展開&描写に耐え切れず、何度か目を覆ってしまいました。

 

バニー・レイクは行方不明 (字幕版)

主人公を信じられなくなる話の決定版!

 

波に乗れていたひな子は、港との恋を、港の死を経験したことで波に乗れなくなった…。しかし、完璧人間だと思っていた港が「努力の人」であったこと、またその決意を抱かせたのが幼い日の自分であったことを知ったひな子は、遂に自分自身の人生を歩み始める…。

 

ちょっと意味が異なるかもしれませんが、ライオン・キングの予告がかかりまくっていることも相まって「サークル・オブ・ライフ」という言葉がしっくりくる展開でした。誰もが誰かと繋がっている、人は絶えず誰かと影響し合いながら生きている。出会って別れて失ったとしても、残るものは必ずあるし、多くの人へまた波及していく…まるで小さい波が合わさって大きな波になる様に。

 

生死のリンク、途切れない愛、影響し合う人と人、人生賛歌…やはり湯浅監督と吉田脚本のタッグだなと。ルーや聲の形で心揺さぶられた部分を上手く融合させていると思います。

 

小説 きみと、波にのれたら (小学館文庫)

 

■私はこれが観たかったのか…!?

散々褒めてきましたが、正直ガッカリした面もちらほら。

 

まずはアニメーション。日常描写、特に食べ物周りのアニメーションは素晴らしいと思うんですが、やはり湯浅監督作品には「摩訶不思議なアニメーション」を期待してしまうんですよ。FLASHの長所である拡大縮小自在な造形変化やクローズアップ演出こそ随所に見られたものの、本当に「随所」でしかないなぁと。恐らく分からない部分で使用されており日常描写に豊かさ厚みを持たせているんでしょうが、完全にフィクショナルな、それでいてルー等の二番煎じでないフィクショナルなシーンを観たかった!後半のテリテリサーフィンは良かった!

 

後はひな子の立ち上がりがかなり駆け足であり、動作反復による復帰描写が少なかったことでしょうか。ライフセーバーを目指すものの就任後の活躍はなし…人工呼吸に失敗するもののその後出来るようになる描写なし…やはり動き一発か台詞一発で明確に示しカタルシスを見せて欲しい。サーフィンを再び出来るようになる、というのも十分素晴らしいのですが、ひな子がみっともなく失敗するシーンはないので正直そこまで感動はなかった…今を生きる洋子と協力して乗り切る、というのは人生の波及を感じさせるのでグッと来たんですがね。

 

あとはまぁ…楽曲ですね…。少なくとも10年以上前からその世界にある曲として登場するのがバリバリの現行J-POPっぽい新曲というのは…。EXILEは10年以上前から大人気のグループなのだから、その意味では不自然ではないのかもしれませんが…それならEXILEの昔の曲を使ってもいいのでは?と思ってしまう。曲そのものよりもそれを口ずさむひな子港が最高ってのは依存無しですが。

 

■〆

さてそろそろ〆です。

ちょっと期待するところとは離れていましたが、それでも十二分に面白い、むしろ直近のアニメ作品と上手く差別化出来ていたと思います。

何よりね、主演4人の演技がどれもいい!特にひな子役の川栄李奈、洋子役の松本穂香は本職声優と遜色ない見事な演技でした。ヒョウモンダコ云々の台詞の応酬はちょっと「キングコング対ゴジラ」っぽいユーモアがあって好きですよ。

 

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映画:アラジン(2019) ~アクションアクション!あ、これポリコレです。アクション!~

こんにちは。光光太郎です。

 

「シンデレラ」「ジャングル・ブック」「美女と野獣」「ダンボ」と、往年のアニメ作品を実写化しまっくているディズニー。1作も観てないですが正直「ネタ切れか…」と辟易していました。しかし、認識は間違っていたと痛感させられました。やはり観ずに批判してはいけない!

というわけで今回は

 

アラジン

 

の感想を書いていきたいと思います。ディズニーとは思えないボンクラ要素が満載だ!字幕で観たよ。

 

実写版『アラジン』 映画パンフレット

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■鑑賞後ツイート

 

■前評判最悪➡公開後高評価ばかりに

「アラジン」が実写化されるという知らせ、予告を観た時は不安しかなかった…。突っ立ってる場面ばかりだしセット感丸出しだし、コスプレ大会に見えてしまった。青いウィル・スミスも散々ネタにされ、映画ファンからの評判も良くなく、あの実写「ダンボ」の後ということもあり、これはスルー案件だな…と思っていたわけです。どうせまたポリコレ祭りなんだろうなとね!子供の頃からビデオで観まくっていた「アラジン」を台無しにするんじゃないかと!

 

しかし、いざ公開されてみると一般層から大好評、そして映画ファン達からも絶賛が相次ぐ状況に!アラジンよりもゴジラを観ろよ!と憤っていましたが、これは観なければならないと思って行ってみると…まぁ本当に楽しかった!確かにポリコレが過ぎるシーンもあるが、とにかく元気で楽しく逞しく、観た後は誰もが笑顔になれる作品でしたよ。こういう実写化なら大歓迎だし、過去の実写作品も観てみないとなと反省しました。

 

■監督がガイ・リッチー!?

今作の監督は、まさかのガイ・リッチー。公開後に初めて知りましたが、その衝撃たるや…だってガイ・リッチーとディズニー作品って全く結びつかないじゃないですか。前作が「キング・アーサー」ですよ!?確かにスラムのガキから王になる話だけど(笑)。

キング・アーサー(吹替版)

 

一番有名でヒットもしたのは「シャーロック・ホームズ」2作でしょうか。

シャドウゲームはともかく、1作目は外連味満載のアクション&ブロマンス要素が楽しかった!

シャーロック・ホームズ(吹替版)

シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム (吹替版)

 

個人的に好きなのは「コードネームu.n.c.l.e」!

カッコいいスーツ&ドレスにウットリ出来ますし、反目と協力のバランスが絶妙なバディムービーは楽しいの一言!カラーデザインも鮮やか、サントラも最高!是非続編を作って欲しいシリーズですよ。

コードネームU.N.C.L.E.(字幕版)

「コードネームU.N.C.L.E.」 オリジナル・サウンドトラック

 

直近の過去作を振り返ってみても、とてもディズニー作品に取り上げられる監督とは思えない…(笑)。

しかし、思えば「アラジン」はディズニーアニメの中でも身体的アクション見せ場が多いですし、何より盗賊の話ですのでガイ・リッチーにはぴったりの題材だったんですね。「ダンボ」にティム・バートンというのは納得の人選でしたが、こういった意外性と適正とを両立させた監督選びを続けて欲しいものです。

 

ガイ・リッチーが監督ということでボンクラ要素が期待される今作ですが、更にボンクラ度を高める要素として挙げられるのはジャスミン役のナオミ・スコット!彼女はあの「パワーレンジャー」でピンクレンジャー=キンバリーを演じていたんですよ!監督はアクションケレン畑のガイ・リッチーで、ヒロインはスーパーヒーロー。そしてジーニーにはエイリアンを殴り電車を止められるウィル・スミス!ボンクラ映画文脈が詰まりに詰まっているのが実写版「アラジン」なんですな。

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■アクションしまくるアラジン!

前述した通りアラジンは盗みや洞窟からの脱出などアクションシーンが多い作品なんですが、今作はそれに輪をかけてアクションがモリモリになってます。え!そこアクションいる?みたいな所でもアクションをさせる!ランプ取るのにロッククライミングしたり、雪国でアブーを助けるためにアクションし始めた時は正気を疑いましたね。

 

ガイ・リッチー節炸裂な盗み、アグラバーを駆け巡るパルクールはアクション映画として見ても全く遜色がない楽しさ!主役のメナ・マスードがどこまで演じているのかは分かりませんが、アニメ版アラジンを超える身の軽さは見事としか言えません。身体性によってキャラクターを表現するというのは「見た目ではなく中身」のアラジンならではでしょうか。ジャファーの設定を少し変えアラジンと完全に対を成す存在にすることで、テーマもより明確化されていましたね。

 

アラジンに限らず、ボディランゲージ(と変顔)がやたらと多い作品だったのもテーマに裏付けされた演出だったのかも。最高のボディランゲージ(と変顔)を披露してくれるのはジャスミンの侍女ダリアでしょうね。あんなハッスルポーズ久しく観てない(笑)。

 

しかしアニメから削られたアクションも多かった。普通のじゅうたんで飛び降りる、蛇ジャファーとのバトル(代わりに空中チェイスが追加)とかが無かったのは残念なところ。

 

アラジン (オリジナル・サウンドトラック / デラックス盤)

中央がメナ・マスード。髪をちょっとおろした姿が超イケメン。アラジンがずっと服を着てるのは、裸だとエッチすぎるからでしょうな。

 

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■ドラマを担うジャスミン

題名こそアラジンですが、ドラマ面で最大のエモーションをかっさらうのはジャスミン

 

 最近のディズニー&世流が否定しがちな「おとなしいお嬢様」では元々ない活動的なキャラクターですが、実写版ではアニメの要素を拡大解釈し上手く現代的な人物へ変化させていましたね。むしろアクション性を抑えめにしているくらい。(進んで棒高跳びはしないし、冗談や演技で策略めいたこともしない)ダンスはするけどね!

 

大きな変更点としては「自らが国王になることでアグラバーを良い国にしたい」という願いを持っていること、そして「黙っている王妃」でいることを求められていることでしょうか。高潔な精神を持っているものの、性別や立場で心を縛られているので活動的にもなれていない。実に現代ディズニー的な、#MeToo運動後のキャラクターといった感じですね。

 

そんな彼女が国家の危機を前に「NO!」と歌い出す!男どもを消し炭にしてやる!!!という気概のイメージ・ミュージカルを脳内再生した後に、極めて論理的かつ部下をよく見てきたからこその名演説をかます律令と心情とを両立した紛れもない「国王」としての姿に、彼女を捕らえているはずの衛兵は黙り、父である国王は笑みと共に涙を流す…。長年の願いを自らの力で発現させた、アラジンのテーマを体現する屈指の名シーンだと思います。

 

ただ、件のシーンで熱唱される「Speechless」があんまりアラジンっぽいメロディーでない、エキゾチックな曲調でないのはちょっとガッカリだったかな…曲や歌詞は凄い良いんだけど…。脳内シーンがかなり特殊な入れ込み方をされてるのも相まって、どうしても浮いてしまう。いやほんと良い曲ではあると思うんすよ!劇場では胸アツだったしさ!!

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ポリコレ的配慮を超え、逞しく高潔なキャラクターとなったジャスミン。しかしながら原点のアラジンらしい「愛のおとぎ話」としても見事な着地を見せてくれます。敢えて恋愛を強調しない作劇も良いですが、やはりディズニーには「信じたい本物の恋愛」を見せて欲しんですよね…世間から、そして自分自身で課していた抑圧を振り払い、シンプルに愛を伝え合う…その愛の成就があまりに美しくて、思わず周囲も見惚れ祝福してしまう…そういった「恋愛」を描いてくれているんですよ。

普通に結婚して普通に子供を産み育て円満な家族で暮らしたいという「願い」を真正面からやってくれたのも良かった…。

 

■ギャグと歌と涙をくれる魔人、ジーニー=ウィル・スミス

観る前に一番不安だったのはジーニーをどうするのかってこと。アニメだからこそ変幻自在なジーニーを実写にしてどうすんだよと!まぁ、杞憂でしたね。実際魔人形態は全部CGらしいので、グリグリ動いてましたね。声の演技とCGのメリハリによって、ウィル・スミスがはしゃぎ倒しているように見えるのもいい。アグラバーへ行って以降は、実写だからこその空間表現空間情報を活かし、更に摩訶不思議な映像にしていたと思います。

 

また、映像では変幻自在放つ台詞は破天荒なジーニーですが、心では自由を渇望しているという複雑な人物でもあります。ウィル・スミスはその絶妙なバランスを実像込みで?演じきっていました。今回のジーニーは歴代ご主人…つまりは人間への失望を抱いているドライさがありつつも、普通の人間としての暮らしに強いあこがれを抱いていたりと更に人間味が増しているので、実写表現にする意義が強まっていますよね。ジーニーは共感を呼ぶキャラクターとなった。

だからこそ、彼が自由を得る場面ではアニメ版とは真逆の、静かな演技演出となっていました。彼の願いもまた魔法の力ではなく、アラジンとの友情によって果たされた(王子ではなく友達)。

 

しんみりした感想ですが、彼が出てるシーンの8割はギャグシーンですから!安心して楽しんでいただきたい!ディズニーというよりはワーナー的なギャグやデッドプール的なメタネタ時代無視ネタがバンバン飛び交う!正にジーニーのギャグ!いきなり映画を巻き戻し「観客を映す」演出をしてきた時はマジでビビった!俺は本当にディズニーを観ているのか?「グレムリン2」じゃなくて!?

ラッパー経歴を活かしてラップ調の曲を歌いあげたり、どう見てもヒップホップなダンスを披露するのもジーニーだからこそ許される!

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「ウィル・スミスが演じるジーニー」として吹替する山ちゃん、やっぱりすごいぜ!

 

 

■キレキレのダンスを見よ!

ディズニーアニメと言えばミュージカルシーン、様々なアニメキャラクター達が踊り歌うシーンが見どころですが、実写版アラジンではダンスに特化!フレンド・ライク・ミーでもジーニーとアラジンが一緒に踊る!行進シーンでもウィル・スミスがどう見てもヒップホップ調に踊る!宮城パーティーでも踊る踊る!

更にラストも皆でキレキレのダンスをしまくって終わる!!!テンション高すぎる打ち上げエンディングなので、どうせならジャファーにも出て欲しかったよ(笑)。それくらいしてもいいテンションだもの!

 

ダンスというのは円舞である以上に、自己表現手段です。現在の教育カリキュラムではそういった方向性でダンスを取り入れているらしいですが、今作でのダンスシーンは正に内に秘めたパッションを表現するシーンとなっていた様に思います。

 

■〆

さて、そろそろ〆にしましょうか。

ネタ切れ実写、ポリコレ祭りと侮るなかれ(侮ってるのは俺だけか…)。アクションとキャラクター表現を一体にした見事な作劇、実写として再構成された魅力的なウィル・スミスジーニー、力強い「NOと言おうぜ!」メッセージと「信じたい愛」…非常に満足度の高い現代版アラジンになっていましたよ。次は吹替版でも観たい!「ライオン・キング」も観る…かな?(笑)

 


「アラジン」本予告編

 

 

映画:プロメア ~極彩色の大決戦!アクションアニメここに極まる!~

こんにちは。

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です。

 

 

今回はTRIGGER×中島かずきの新作劇場長編作品

 

プロメア

 

の感想を書いていきたいと思います。スパイダーバース公開から間を置かずに日本で今作が公開された意義は大きいですね。

 

promare-movie.com

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https://promare-movie.com/special/

 

 ネタバレするよ!

■鑑賞後ツイート

 

■熱血最強の布陣

今石洋之×すしお×中島かずき×コヤマシゲト×澤野弘之、この座組はTRIGGERのみならず日本アニメの最強傑作である「キルラキル」と同じなんですよ。完全一致でないものの「Re:キューティーハニー」「天元突破グレンラガン」等は今石洋之×中島かずきの代表作でしょう。

【メーカー特典あり】 キルラキル コンプリートサウンドトラック(メーカー特典:「特製ステッカー(流子・皐月・マコ)」付)(通常盤)

3話に1回最終回があると評される熱血バトルアニメ

 

天元突破グレンラガン コンプリート DVD-BOX (全27話, 660分) GAINAX アニメ [DVD] [Import] [PAL, 再生環境をご確認ください]

ロボットアニメはやっぱり最高だな!と思わせてくれた、人生を変えた作品

 

ケレン味たっぷりのアニメーションを手掛けまくる監督、今石洋之。ハルク大好き!!

最高のアクション作画マンすしおTwitter面白い!

無理を通して道理を引っ込める熱い展開を書かせたら右に出る者はいない面白おじさん、中島かずき仮面ライダーフォーゼもやってるぜ!ウルトラマンマックスでは「燃えつきろ!地球!」という脚本もやっている。

ベイマックスを手掛けた天才デザイナー、コヤマシゲト。トップ2!エウレカセブン!HEROMAN!サイバディ!キャプテンアース!ダーリン・イン・ザ・フランキス!全部のデザイン好き!

暑苦しい映像へ爽快壮大な音楽を被せやっぱり暑苦しくする澤野弘之伸びのある歌唱、畳みかけるような合唱、押し迫るオーケストラ、かっこいい英語曲によってエモーショナルな展開にドンドンのめり込ませてくれる。カバネリやガンダムUCもこの人なので、その力量たるや恐るべし。

 

それぞれ単独でも鼻血が出るほど熱く面白いものを手掛けているのに、皆集まってアクセルしか踏まない様な作品を作ったらどうなるか…超熱くて面白くて、それでいて現行の技術力を数段上に押し上げるような作品が出来るに決まっている!!!!そしてそれは実現していた!!!!!!

 

「プロメア」は間違いなく、日本アニメーションの歴史に残るでしょう。前述した通り、アニメーションというものを格段に進化させた「スパイダーバース」の公開後1年以内に日本からこういった作品が出たことを、誇らしく思いますよ。お話やバランスは全然悪癖だらけだけどね!!!

 

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今石洋之監督のみならず数多くのアニメーターに影響を与えた金田伊功の傑作の一つ。滑らかさよりもメリハリ!ガニマタ!フレア!

 

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こちらも是非に

 

■アクションアニメの到達点

とにかく今作はアニメーションが凄いんですが、特筆すべきは冒頭のアクションシーンでしょう。YouTubeで一部公開されているので是非観てみてください。

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これ、本当に「一部」なんですよね~。ここからでも分かるのは「動きまくるカメラワーク」と「メリハリとパースの効いたケレン味ある画」とが完全一体となっていること。グリグリカメラが動くパートは恐らくCGなんでしょうが、一時停止しても「2Dアニメーションの一枚絵」として成り立つ程の違和感の無さです。2Dアニメと3DCGとがシームレスに繋がることによってアクションやドラマの連続性が高まりますし、何よりも「奥と手前」を駆使したメリハリある空間演出が堪らない!2D3D合体キルラキルでも使われていましたが、今作では更に更に多くのアイデアがある上に描画自体も向上しているから、進化が一目瞭然。

 

見応えのあるアクションが序盤からぶち込まれますが、実はそのどれもが見やすいように設計されています。今作ではどのキャラクターも基本は直線的に動くので、視点が動いても「何が起こっているか」「何を見ればいいか」を迷うことはないでしょう。いや、終盤はちょっと迷うな(笑)。

 

あと触れておきたいのは、のによる表現!!

バーニッシュを▲、世間を■として、様々な表現に▲■が使用されている。炎や灰は極力▲のみで描画されているし、プロメポリスは碁盤の目の様に■いし完全に平行だ。バーニッシュ側か世間側かでレンズフレアも区別される徹底ぶり。レゴムービーか!

この▲■表現の最たるものはOPでしょう。▲■のみで、これは二者対立の物語であり■が▲を支配していること示し切っている。ここでもう、ウットリしてしまった。まるでソウル・バスによる美しく制御されたOPシークエンスを観ている様な感動があった。

 


映画『レゴ®ムービー』本予告【HD】 2014年3月21日(金・祝)公開

全てをレゴで表現した狂気の傑作 

 

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ソウル・バスが手掛けた「サイコ」のOP

 

今作が技術とセンスがつぎ込まれた博覧会のみで終わっていないのは、アニメーションと物語と声優陣の熱量とが完全に一致しているからでしょう。どうだ!凄いだろう!?ではなく、熱くするべきだからこそケレン味ある映像にする!心たぎらせる映像だから声の演技も熱くなる!この熱さは作品作りの必然であり、混ざり合って炎となった「プロメア」はアクションアニメの一つの到達点!!!

 

■単純に熱くなれるストーリー

中島かずき脚本を楽しむコツは、とにかく勢いに身を委ねることだ。

整合性よりも勢い。引き算より足し算乗算。バランスよりも一点特化。突発的に始まる陰湿な暴力。過剰に熱く文量が多すぎる名台詞の数々。それらを(強引に)まとめ上げ無理を通して道理を引っ込める物語として、分かりやすく楽しみやすい娯楽作品に仕上げてしまうその手腕には脱帽するしかない。また、粗雑に見える物語展開の端々にロジカルな展開や豊かな語彙に基づく台詞等を潜ませてくるのも侮れない。

 

今作でもそんな中島節は全開で、ガロとリオというW主人公を軸に「奴隷解放もの」「バディもの」カタルシスが満載なストーリーになっている。そしてやはり最後は、自分と他者とを信じきって貫き通した道の先にある希望を見せてくれる。黒幕との非常に分かりやすい対比構造はグレンラガンを思わせるが結末は真逆だし、中島かずき作品の中でも屈指のキレで〆るラストからのエンドクレジット入りには心の中で大拍手ですよ。

 

「プロメア」オリジナルサウンドトラック

 

まぁでも、中盤から終盤にかけて6転位するクライマックスの連続は流石に疲れるし、結局バーニッシュの差別問題は有耶無耶になって終わるし、その割には差別問題に結構踏み込んだ描写をするし…劇場長編アニメとしてのバランスは良くない。これは「劇場版天元突破グレンラガン 螺巌編」や「ニンジャバットマン」でも感じた共通の欠点だ。

 

熱いお話もそれに応えすぎる映像も大変結構だが、次回のタッグ作品では少しバランサーも入れてマトモなクライマックスにして欲しい…でないと日本のマイケル・ベイって呼ばれるぞ!!!

 

■嘘でありリアルなメカニックの魅力

主人公ガロやリオを始めとしたキャラクター達が生き生きと動くのは勿論ですが、私が推したいのは魅力的なカニックたち!!バーニングレスキュー達の各種レスキューマシンは「トミカヒーローシリーズ」を思い起こさせます。前線基地かつ消防車な「メガマックス」と、空中から現場を把握する「スカイミス」の組み合わせなんかもグッときますね。

 

トミカヒーロー レスキュー合体シリーズ レスキューストライカー&レスキューコマンダーセット

トミカヒーロー2 01 DXファイアードラゴン

 

パワードスーツは収納や輸送、着脱、作業用ギミック等が盛り込まれており、しっかりと「運用されるメカ」のリアリティがある。フィクショナルな世界観、ありえないアニメーションの中にこそ実用性を盛り込むというのは、グレンラガンキルラキルでも多く見られた手法ですね。

 

ただ終盤に登場する巨大ロボットの描き方や役どころを見るにつけ、やはり今石監督は巨大なロボットが行うアクションにはあんまり興味ないんだろうなと思いますね…。どちらかと言うとミニマムなメカニズム描写にこそ関心があるのでしょう。だからこそ、人間サイズのアクションと巨大すぎないメカニズムアクションとが掛け合わされた冒頭のアクションシーケンスが今作最高のシーンになっているのだ。

 

 

■俳優声優陣の熱演

本職声優以外を起用するのはジブリ細田アニメ等で顕著な手法ですが、なんとゴリゴリのサブカルオタク向けアニメ会社であるTRIGGERが手掛けた今作でも、主役三人は俳優さんが声を当てています。

日本かぶれの主人公カミナガロ・ティモス松山ケンイチ、炎を操る放火組織マッドバーニッシュのボスのリオ・フォーティアには早乙女太一、プロメポリスの執政官クレイ・フォーサイトには堺雅人と、かなりの業火俳優陣だ。

 

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最初はかなり不安だったが、実際観てみると見事なハマりっぷり。しかも「今石洋之×中島かずき」作品にぴったりの熱演!考えてみれば松ケンは「デトロイトメタルシティ」やってるし、早乙女太一は舞台役者だから声量はあるだろうし、堺雅人はオーバーアクトで成り上がってきた人だから、熱い叫びが求められる今作には合っている。松ケンは熱い口上を見事に捲し上げるし、早乙女太一はエロい上に後半どんどんデレ演技に拍車がかかる(アニメも)し、堺雅人は誰もが堺雅人に求めることをやりきっていた。

 

映画秘宝のインタビューでも中島かずきは「第一希望のキャストが揃った」と言っているし、元々劇団☆新感染の舞台に出ていた方々らしいから、勝手知ったる仲だったんでしょうな。

俳優陣で言うと、プロメス博士役を演じる古田新太も「パワーレンジャー」に引き続き上手かった。エンドクレジットで初めて分かった位。洋画吹替にもどんどん参加して欲しい役者さんだ。

 

本職声優陣はもうTRIGGER作品の常連といった感じで安定感も掛け合いも抜群。個人的には小西克幸(カミナ)や小清水亜美キュアメロディ)の参戦が嬉しかった。グレンラガンキルラキルから続く檜山修之の「しまったぁ!!」芸は今回もある。岩田光央はちょっと落ち着け。

 

■〆

さて乱雑になってきたのでそろそろ〆だ。

人生を決定的に変えた熱血ロボットアニメ「天元突破グレンラガン」から12年…その因子は確かに「プロメア」に引き継がれていた!ロボットはあんまり…あんまりだけど(笑)。熱さと勢いはカッコいい!諦めを押し付けられようが枠にはめられようが、心だけはまっすぐに燃やし続けろ!!子供の頃に受け取った熱いメッセージを、今作でも同じように感じましたよ。傑作!!!

 

あ、あと露骨なマジンガーZパロには笑いましたね。

 

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いつもお世話になっているヒナタカさんの語り合いラジオ。引き算思考で作った!?マジで!!???!?