光光太郎の趣味部屋

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映画:マンハント ~しずる感の教科書~

「君よ憤怒の河を渡れ」という映画がある。

日本版「北北西に進路をとれ」な豪華絢爛さであり、かつ砂埃と汗臭さが漂うド根性日本映画だ。不撓不屈の男高倉健、どうみてもヤクザな刑事原田芳雄、強すぎる意思と行動力を持つド根性令嬢中野良子……お話よりもキャストの熱演で引っ張っていた。音楽からテンションからどこをどう見ても東映っぽいが、松竹映画らしい大作である。

 

 

そして、中国で人気が高いことでも知られる映画だ。Wikipediaによるとこうだ。

この映画は中華人民共和国でも、1979年に『追捕』として公開され、文化大革命後に初めて公開された外国映画となった。公開は無実の罪で連行される主人公の姿と、文化大革命での理不尽な扱いを受けた中国人の自身の姿を重ね合わせて、観客に共感を持たせ大変な人気を呼び[3]、中国での観客動員数は8億人に達したとされ[4][5]高倉健中野良子は中国でも人気俳優となった[3]

この映画に魅せられた監督の一人がジョン・ウーであり、彼の手によって超絶トンデモムービーとしてリメイクされたのが

 

 

マンハント

 

 

原題「追捕 MANHUNT」である。今回の感想題材だ。

 

gaga.ne.jp

 

 

 

雑感としては、70年代東映のフィーリングに全てが支配されてしまったファンタジージャポンオオサカを舞台に、カッコつけないと生きていけない人々が織り成すアクションドラマが堪らなく楽しい。クソダサい演出、リップシンク完全無視、5万回位あるジャンプカットで頭は崩壊寸前になる。

 

 

つまり、間違いなく、これまでにない映像体験を楽しめるということだ。映画は魔法という言葉があるが、今作は正に魔空空間へと引きづりこんでくれる。単発で観ると本当にダサい演出を連発するのだが、超絶しずる感でクソカッコいい映像へと変える。しずる感への拘りは狂気の域だ。滴る汗、舞い散る羽毛、しなる枝、ひらめく桜、ぶっかかる水、マズルフラッシュ、翻る肉体、福山雅治の毛穴……………劇中のありとあらゆるものに過剰なしずる感がもたらされている。映像学校で教材にすべきだろう。

因みにしずる感とはこういうことである。「艶っぽい」ということかもしれない。

 

 

youtu.be

 

リメイク元である「君よ憤怒の川を渡れ」への敬意もふんだんに込められている。そもそも冒頭から『君よ、「君よ憤怒の川を渡れ」って映画知ってる?滅茶苦茶いいよね。俺好きなんだよ。え!君も好き!?いいね!』というボンクラな、しかし激渋カッコいい映画トークがぶち込まれている。しかもこのトークが物語のキーになるのだ。「君よ憤怒の川を渡れ」には人生を変える力がある、映画には人を救う力があるのだという力強いメッセージだと、私は思う。

 

 

また、今作は ヒッチコック作品を意識して作ったらしい。が、巻き込まれサスペンスという型と「知りすぎていた男」における銃をちょろっと出す演出位なもので、全体を観るとどう考えてもヒッチコック作品ではない。いや、巨大権力に翻弄される若者?という点では「逃走迷路」的でもあるか。

 

 

多言語入り乱れる面白さも忘れてはならない。登場人物達は日本語、北京語、英語を状況によって使い分けることによって、秘密を共有したり密かにメッセージを伝えたりしている。確か敢えて誤訳を伝えるギャグもあったはず。

多言語の登場は言語力の有無が映画世界に存在するということである。つまり、共通言語を持つ者同士でのみ成立するコミュニケーションや、通訳を挟んだ三者間コミュニケーションを描けたりする。これを上手く使うとサスペンスやコミュニケーションの面白さを何倍にも奥深く、リアルにすることが出来るのだ。「コードネーム U.N.C.L.E.」や「イングロリアス・バスターズ」「ワンダーウーマン」ちょい使いでは「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」なんかが上手いので、是非観てみて欲しい。

 

 

そろそろの結びに行く前に一つ言いたい。この魔空空間オール日本ロケで作られている。恐らくシャリバンを意識しているのだろう。ガン&ブレードアクションなんて正にシャリバンだし。

なにより日本でもアクション大作を作れる程の場所があるのが素直に嬉しい。そしてその許可を出した大阪の偉い人、あんたは偉い!

 

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あと一つ、最後に言いたい。福山雅治桜庭ななみが行った現場検証という名のプレイ、あれは何だったんだろう…。

 

 

さて結びだ。とにもかくにもアクションとしずる感で突っ走る体感時間10分の最強娯楽映画だと言える。娯楽性で言えば2018年4月現在でぶっちぎり今年ナンバーワンだ。劇場公開はもう終わっているのでブルーレイや配信をおとなしく待つべし。

 

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