光光太郎の趣味部屋

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映画:ペンギン・ハイウェイ ~熱血ジュブナイル爆誕~

何にも考えずに「面白がれる」物語は意外と少ない。

テーマが自分にドンピシャでも演出が面白くない、エンタメとして楽しくても物語が全く響かない…映画に限らず物語作品全般において、テーマ性とエンタメテクニックが自分にガッチリとハマり「面白がれる」ことは、極めて稀だと思う。

 

だからこそ、ドンピシャな作品は大切にしたい。今回は私にとって「面白がれる」物語だった

 

ペンギン・ハイウェイ

 

の感想を書いていきたい。原作未読。

 

 

作品情報

penguin-highway.com

 

原作:森見登美彦

監督:石田祐康
脚本 :上田誠(「夜は短し歩けよ乙女(原作は森見登美彦)」の脚本)
キャラクターデザイン・演出 :新井陽次郎
演出:亀井幹太
監督助手:渡辺葉
作画監督:永井彰浩、加藤ふみ、石舘波子、山下祐、藤崎賢二
美術監督:竹田悠介、益城貴昌
色彩設計広瀬いづみ
CGI監督:石井規仁
撮影監督:町田哲
音響監督:木村絵里子
音楽:阿部海太郎
主題歌:宇多田ヒカル「Good Night」

 

声優陣

アオヤマ君:北香那
お姉さん:蒼井優
ウチダ君:釘宮理恵(キュアエース)
ハマモトさん:潘めぐみキュアプリンセス
スズキ君:福井美樹
アオヤマ君のお父さん:西島秀俊
ハマモトさんのお父さん:竹中直人(仙人)

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

原作。おっぱいは隠れて見えない。

 

雑感

今作はネットで話題になっているような、小難しいSFやおっぱい連呼よりも何よりも、誰もが楽しめる「分かりやすい物語」なんですよ。利己的から利他的に、惚れた女の為に、自分自身で世界に意味を付ける為に……子供の成長譚としてカタルシスに満ちた娯楽作!

テーマは分かりやすく、エンタメとして盛り上がれる工夫を凝らす。「君の名は。」や「シン・ゴジラ」に通じる、エンタメスピリットを感じましたよ。

 

ペンギン・ハイウェイ (角川つばさ文庫)

原作は児童向け文庫にもなってるらしい。児童向けギリギリを責めるおっぱい。むしろ髪のタレ具合がエロい。

 

背伸び子供が成長する物語

前述した通り今作のテーマは「成長」。アオヤマ君は異性への好意を自覚して自分を変えていくので、恋による成長だ。

 

アオヤマ君は天才で努力家、暴力に怯えず立ち向かう勇気も最初から持っている。しかしそれはどこか利己的で自己中心的。彼が行う研究も「偉くなるため」のもの。蒼井優演じる(ねちっこい声が堪らない)お姉さんを「結婚したい相手」とは言うものの、それは結婚という制度を知っていてそう言っているだけに聞こえる。

彼は大人顔負けの「力」を持っているが「心」がまだ未熟なのだ。この「心」の成長が今作の激エモポイントになるのだが、これを促すのは見事なおっぱいを持つお姉さん。

 

お姉さんはアオヤマ君によるおっぱい研究対象兼片思い相手なのだが、当のアオヤマ君は冒頭では恋を自覚していないと思われる。何故おかあさんのおっぱいではなく、お姉さんのおっぱいにだけ惹かれるのか?を大真面目に研究する位なので、性的な目で見ていない。いや、見てはいるだろうが、ロジカルに研究する意欲の方が勝っているのだろう。

 

そんな彼がお姉さんを好きだと気づき、もっともっと知りたいと思った。痛みを分け合いたいと思い実行した。しかし知れば知るほど彼女の存在は手の届かないものに…せっかく芽生えた恋心は、世界救済と引き換えに思い人が消える幕引きにしかならないと、天才ゆえに知ってしまう。

それでも!思い人の望みを叶える為にアオヤマ君は走る!考える!

未知を解き明かし、意味づけし、既知にして、世界のルールを変える為に。これぞまさに「研究」であると思う。利己的から利他的に、力ではなく心で、これから彼は研究を続けていくのだろう。

 

子供が恋を知り、喪失を知り、世界への立ち向かい方を知って大人へと成長する…苦くとも爽やかなブラックコーヒーのような、大傑作ジュブナイル爆誕を劇場で観れたことが何よりも嬉しい。

 

(まぁこういう作品が刺さるのは、現実において自分は実践できていないと思っているからなんだけども…でも少しでも、アオヤマ君に近づきたいと思うからこそ、毎日頑張る元気を貰えるんですよ!!!!!!)

 

ペンギン・ハイウェイ 01 (MFコミックス アライブシリーズ)

コミカライズ。かなり映画に似せてるけど、お姉さんは少し肉付き良くなった?

 

面白がれる話の組み立て

主人公であるアオヤマ君は、正直嫌な要素をたくさん持ったキャラクターだと思う。

小学四年生にして勤勉努力家ロジカルシンキング、口先で人を泣かすほどに弁が立つし、勇気もある。しかもそれを自慢しない。要素だけ挙げれば、こんな完璧キッズのラブコメなんて見たくないわ!となるが、本編を観てみると全くそうならないのだ。

その理由は、開始直後に「大真面目に論理的におっぱいの研究をしている」ことを見せつけるからだ。これによって、頭はいいがどこかズレている、しかしとても純粋な子であることが一発で分かる。同級生のウチダ君に対する一方的かつ過剰なロジカルトークでダメ押しだ。完璧に見えるが抜けてる部分もある、愛すべきキャラクターであることがすんなり入ってくるだろう。

 

アオヤマ君の導入をはじめ、今作は話を順序良く組み立てることで行動をスムーズに理解出来るようにしている。

 

白眉だと思うのは、アオヤマ君が断食するくだりだ。

「お姉さんが3日間何も食べていないのに大丈夫なのは何故なのか?」を自分で実践するのだが、まぁ小学生がそんなことをすれば体調崩すのは当たり前なわけで…。熱発で寝込んでしまうことに。しかし、恐らく彼は、1日(1食?)食べないだけでこんなに苦しいのに、何故お姉さんは大丈夫なのか?もしかして耐えているだけなのか?それとも…色んな事を考えたはず。人の痛みを体験することで、彼はお姉さんについてもっともっと知りたいと思った。勿論、痛み苦しみを想像できるようになった。

 

だからこそ、彼がハマモトさんのお父さんを助けるために走り出すことに明確な理由が付くし、生涯を懸けてお姉さんを助けるという決意にも強い強い芯が出来たのだと思う。

というか、痛みを知った人間が誰かを助ける、という展開が熱すぎる。だからこそ、お姉さんを失うのが辛すぎるんだけどねぇ…。

 

ペンギン・ハイウェイ 完全設定資料集

メインビジュアルでがっつりおっぱいを見ているアオヤマ君。因みに私も大学の友人から「いっつもおっぱい見てるよね」と言われたことがあります。今も治ってないね、きっと。

 

 

楽しすぎるワクワク要素てんこ盛り

とまぁこんな小難しいことを抜きにして、頭空っぽで楽しめる要素がてんこ盛りなのだ。

 

まずは何と言っても美麗な作画。

自然が多い郊外住宅地がリアルに描画されていて、時々実写と見紛う程。かと思えば「海」がある原っぱや暗闇洞窟手前にある駅といった少し変な風景が現れたりする。極めて現実に即した形でファンタジーを描いているし、画面の全てに意味を含ませているので、映像を観るだけでも楽しい。

 

次は研究パートだ。

詳細に書き込まれたアオヤマ君のノートは是非ともじっくり見たいので、先ほど載せた資料集は買わざるを得ない。彼は「思考の足跡」をメモるタイプだから見せるだけで伝わるのが映画としてスマートだった。研究時に行われるロジカルシンキング、そこから結論が導き出された時のカタルシスは、課題解決をゲームとして捉える人にとっては堪らないだろう。そうでなくとも、アオヤマ君達が好きなことにのめり込んでいく様に共感を覚えない人はいないだろう。

 

最後に挙げたいのは怪獣要素。

後半になって突然、とんでもなく気色悪い怪獣=ジャバウォックが出てくる。ダレン・シャンに出てくる「色んな所から手が出ている怪物」みたいなキモイのが、本当にいきなり現れてくるので心底ビックリしてしまった。よく「日常に侵食してくる怪獣」という描写や表現があるが、それを全く匂わせずにぶち込まれたのは初めてかもしれない。

 

おっぱいは言わずもがな、なんでね。

 

120分近い、アニメとしては結構な長尺がちとキツイが、間違いなく2018年を代表するアニメ映画、邦画になる傑作だ。週末興行収入ランキングで初登場10位と出だしは悪いが、私が観た回は平日にも関わらずほぼ満席だったし、口コミで話題が広がっているのだろう。おっぱいがどうこうと言うのは気にせず(こんな描写で気になる位なら日々CMで垂れ流されるソシャゲやらアニメやらの爆乳キャラの方がよっぽどNGだろう)、全国の小学生達にぜひとも観て欲しい。そしてブラックコーヒーを飲み、夏休みの自由研究をしてみよう!!!!

 

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