光光太郎の趣味部屋

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ユニバーサルホラーの映像特典が歴史面特撮面で面白い

会社人生活2年目終盤、段々仕事も忙しくなり時間も無くなってくるもの。趣味に興じる隙間時間も最近は専ら「レッドデッドリデンプション2」や「スマブラ」に侵され、映画を観る時間が激減してしまった。

 

そんな中、隙間時間の更に隙間をぬって楽しんでいるのが「映像特典を観る」こと。映画のBlu-rayやDVDには貴重なメイキングやインタビュー集が収録されていることが多く、時間も短めで手軽に映画の世界を楽しむのに持って来いな規模感なのだ。

映像特典には、メイキングや撮影風景等で作品自体を深掘りする「点」的なものと、作品をとりまく過去作や時代等を扱った「線」的なものがあるが、私が好きなのは後者だ。社会情勢や製作背景を踏まえてあくまでも外側から分析した特典を観ると、作品理解の大きな助けとなるから。美術館でキュレーションを受けることで美術品が持つ莫大な情報量を知って楽しむ感覚に近い。

 

特にお気に入りなのが「ユニバーサルホラー映画」達、つまりドラキュラやフランケンシュタインの怪物、狼男達が登場する映画の映像特典だ。怪物、モンスター好きとして粛々とBlu-rayを買い集めていたのだが、ぶっちゃけ本編よりも映像特典ばかり観ている。その面白さ貴重さは次の2点にまとめられるだろう。

 

1920年~50年のホラー映画史総括

・抜群の特撮技術

 

もっと簡潔に言えば

「昔から凄かったのか!すげぇ!」

「全部繋がってるのか!すげぇ!」

なのだ。

 

これらを楽しむにはどのBlu-rayを買えばいいか?そもそも何が面白いのかについて、順を追って書いていきたいと思う。まぁ「フランケンシュタイン」を買えば大体全部観れるよ!

 

 

1920年~50年のホラー映画史総括

おススメ作品:

フランケンシュタイン [Blu-ray]

魔人ドラキュラ [Blu-ray]

 

フランケンシュタイン」には、その名もズバリの「ユニバーサル・ホラー制作秘話」という映像特典が収録されている。ユニバーサルが創出したホラー映画群が90分に渡って語られる骨太特典で、隙間時間で見るというのと矛盾するが、これが無類に面白い。
サイレント映画の時代から始まり、ドラキュラやフランケンシュタインといった古典モンスターの誕生、モンスター映画の衰退までが、映画史研究家や当時の役者陣などへのインタビューによって紡がれていく。

 

まず何よりも、色んなホラー映画の映像を観られるのが滅茶苦茶楽しい。つまり映画技法をわんこそば状態で観れるということだ。サイレントのホラー映画達は作られてから約100年経過しているが、100年の中で使われてきた恐怖演出の殆どがこの時期の作品で既に生まれていることがよく分かる。焦らしに焦らして、大きな音と共に怪物がドーン!と出る!(サイレントだから音は劇場での生演奏か何かだろうけど)、画面の隅に異物が現れドンドン近づいてくる、揺れるカーテン、伸びる影、etc…。直接的な残酷描写はないものの、モンタージュによって「瞳を手で抉り出す」を想起させるシーンなんかは今見ても震え上がってしまう。


こういった技術はアメリカ映画史だけで培われてきたわけではない。ドイツ映画「カリガリ博士」や「ノスフェラトゥ」で多用される表現主義(不安定な心情を表現したグチャグチャ美術、伸びる影…)や、その他ヨーロッパ映画の美術等から大きな影響を受けていた。映画は映画に影響を与え、その技術を進歩させているのだ。

 

また、娯楽は社会情勢が反映されているもの。特典では、何故こういったモンスターが生み出されたのか?何故このような恐怖を描いたのか?等を当時の社会の様子に紐づけて分析されている。第一次世界大戦後は体が欠損した負傷兵をイメージさせる作品があったり、世界恐慌以降は異形のモンスターが流行ったり。ハリウッドで最初に超常現象を扱ったのが「魔人ドラキュラ」と言うのはかなり意外だ。ドラキュラ小説誕生から舞台版、映画版の成功からのモンスター路線等を詳しく知るには、ドラキュラに収録されているメイキングを参考に。また、ギョッとしたのは、身体障害者が、悲劇的ではあるものの悪役として描かれる作品が多いこと。まぁ、これが変化しだしたのは極最近の話か…。

 

映画技法の積み重ね、社会情勢に合わせてのホラー映画の変遷等、映画を点ではなく大きな流れの縦軸と同年代の横軸とで「歴史」「現象」として語りなおすのが、この映像特典の魅力だ。懇切丁寧なキュレーションにより、当時の観客が抱いていたであろう感覚や前提知識を持って作品を観ることが出来る。つまり、映画の見方が変わる。惜しむらくは、映画よりも特典ばかり観てしまうほどの面白さだろう。

 

 

抜群の特撮技術

オススメ作品

 

フランケンシュタイン [Blu-ray]

透明人間 [Blu-ray]

ミイラ再生 [Blu-ray]

狼男 [Blu-ray]

大アマゾンの半魚人 (2D/3D) [Blu-ray]

 

ホラー映画につきものなのは「特殊メイク」と「映像効果」。まぁ映画っつうより全ての映像作品に必須なことだが、ユニバーサルホラー映画の映像特典には、これら2つの黎明期が詳しく解説されている。特に特殊メイクについては各作品毎に別途の映像特典がつく程の徹底ぶりだ。総括したいのならやはり「フランケンシュタイン」で決まり!

 

まずは特殊メイクの映像特典についてから。フランケンシュタイン、ミイラ再生、狼男で取り上げられているが、語られているのは大まかに2人の天才、ロン・チェイニーとジャック・ピアースについてだ。

 

当たり前の話だが、役者は自分の顔をよく見せたいものなので、1900年代初頭はホラー映画であっても極端なメイクは避けられがちだった。これを革新したのが、自分で自分のメイクをし続けたロン・チェイニーだ。「ノートルダムのせむし男」や「オペラ座の怪人」等を見ると、体つき顔つきを完全に変えてしまう正に「特殊メイク」を施している。特典ではこういった「特殊メイクの始まり」を様々な作品を用いて語られているので、是非観てみて欲しい。

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せむし男のカジモド

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オペラ座の怪人

そして、今我々が知るフランケンシュタインの怪物やミイラ男、狼男といった造形を作り上げたのがジャック・ピアースだ。彼の功績については「狼男」「ミイラ再生」両方に収録されている特典に詳しく、「長時間メイクによる丁寧な造形」の功罪について語られている。6時間以上かけて綿密なメイクを施すことにより創り上げられたモンスター達のビジュアルの素晴らしさを讃えるのは勿論だが、決して快適とは言えないメイクを受ける役者との軋轢や、質では劣るが短時間で済むメイク法の登場により仕事を追われてしまうなど、彼の影の部分についても知ることが出来る。

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ミイラ再生のミイラは一瞬しか登場しないが、インパクトは絶大

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上記2人の作品ではないが、スーツ造形を楽しみたいなら大アマゾンの半魚人!!怪獣スーツだ!!!



続いて映像効果。ホラー映画は、映画が誕生したその時から、怖がらせる驚かせるテクニックとして様々な映像効果が使用されてきた。

 

はい!やっぱり「フランケンシュタイン」の映像特典で総括できます。ここでは、サイレントの時代からカメラ撮影であることを活かしまくった工夫が連発していたことが分かる。

例えば、重病人の病気が治る様子をワンショット撮影で見せているのだが、これは暗記シートの理屈、つまり赤色は赤フィルターを通すと見えなくなる性質を利用している。白黒だから出来ることで、カラーでやったら「仮面の忍者 赤影」みたいになっていただろう(赤影も特撮のアイデア抜群なので是非)。

 

映像効果とは少々違うが、ワンショット変身時に演技のみで説得力ある変身をみせる映画が多いことにも驚いた。そっけなく撮られている分、怖かったりする。

 

モンタージュによってワンショット風変身を作り続けてきたシリーズは「狼男」だ。人間から段々と毛むくじゃらの狼になっていく様を描くには、段階段階のメイクを施して撮影して直してメイクして撮影して…という気の遠くなるような作業が必要だが、狼男シリーズも回を重ねるごとに変身がスムーズに、繋ぎ目が分からなくなっていく。特典で詳しく語られてはいないが「狼男アメリカン」でリック・ベイカーが行った、モンタージュせずに狼男へ変身するシーンは、狼男シリーズが目指し続けた映像効果の1つのゴールと言えるだろう。

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そのものずばり映像効果!!が見たいのであれば「透明人間」だ。まずは予告を観てみて欲しい。

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公開されたのは1933年。まだ第二次世界大戦も始まっていない頃に、こんなとんでもない特撮映画があったのだ。キングコングもこの年かな?

鏡の前で包帯を取り透明になる「変身」シーンや、透明人間による様々な悪戯をみせる操演など、日本で慣れ親しんだTHE・特撮が炸裂しまくるのが「透明人間」であり、そのメイキングには特撮に関する技術的解説が懇切丁寧になされている。前述の変身シーンでは4枚以上のフィルムを合成して作ったとか…そんなことが可能なのか…。

 

特殊メイクにしろ映像効果にしろ、今観ても変わらぬ驚きがあるはずだ。それは現在使われている技術に古典が脈々と受け継がれていることであり、現代娯楽が古典無くしてはありえないことを端的に示している。つまり、何事も遡っての勉強が必要だということですな…。

 

さて、そろそろ〆だ。

映画好きとしても、特撮好きとしても、勿論モンスター好きとしても、ユニバーサルホラー映画の映像特典達はとても面白く、楽しい。何度も何度も観てしまう。古典誕生から現在への影響までが語られる大河ドラマ的な要素が後を引くのだろうか?

とりあえず、興味があるなら1000円そこそこの「フランケンシュタイン」のBlu-rayを買おうぜ!!