光光太郎の趣味部屋

Twitter感覚で趣味や心情、言いたいことをつらつらと。

映画:風と共に去りぬ ~絶望からのド根性、そして百合~

こんにちは。

光光太郎です。

 

午前十時の映画祭にて

 

風と共に去りぬ

 

を観てきました(5/19の話)ので、忘備録としてTwitterを中心に感想を残します。毎回言うけど、映像が超綺麗!!第二次世界大戦前の映画だよ!!???

 

風と共に去りぬ (字幕版)

 

■鑑賞後ツイート

 

 

 

 

■問題点と評価点を並行して語ろう

今作は奴隷制度の美化やKKK=クークラックスクランの正当化等が行われているために現代ではポリコレ観点から強い批判を受けています。実際観てみると、主従関係を良きこと化したり、黒人奴隷達を田舎者として描いたり、あまつさえ字幕で「~ですだ」という語尾を付けたりと散々な有様。上記の2作品や「それでも夜は明ける」「ブラッククランズマン」等を観ていると噴飯ものです。

 

ただ、今作が製作されたのは1939年なので、現在と倫理観が異なるのは当然でしょう。自由公民権運動が起こる20年近く前ですしね。私達が今触れている作品達も、数十年後には批判されるべきものになっているかもしれません。

 

過去と現在とを相対化し倫理観をアップグレードするには、「風と共に去りぬ」の問題点をあぶり出し批判することは絶対に必要です。しかし、それと映画の評価を貶めることとを同義にしてはいけない。現代にも通底する力強いテーマがありますし、長尺にも関わらず飽きさせない構成の数々、豪華絢爛な美術や衣装等、後世に残すべき文化的遺産が詰まっています。

 

政治的汚点もある、しかし文化的良点もある。これらを同時に語り娯楽作品として残すことには、歴史的価値が確実にあります。何故なら、今私がそういった考えに至れているのだから…。

 

■ド根性大河ドラマ

アメリカ南部を舞台に、南北戦争に巻き込まれつつも逞しく生き抜いていく南部貴族の娘スカーレット・オハラの半生を描く…まるでNHK大河ドラマのよう。時代も明治維新前位なので、ますます大河じみてますね。世界中で大ヒットし「世界中で必ずどこかの町で常に上映されている」との噂まであります。アメリカ史を描いたものが何故世界で受け入れられたのか?それは誰もが共感できる「ド根性精神」があるからではないでしょうか。

 

冒頭で主人公スカーレットは「全てを持った少女」の様に描かれます(愛だけは満たされないわけですが)。しかし南北戦争によって富を失い精神的支柱も失い、頼るもの全てを無くしてしまう。家族全員路頭に迷っている…明日への希望が何もない状況に追い込まれ、遂にあの高潔なスカーレットがクズ野菜を貪ってしまう…絶望の底に叩き落されたスカーレットは「もう頑張るしかない!!!!!」というド根性を発揮!泥水をすすり地べたを這いつくばってでも、必ず貧乏から脱してみせる!それに、私達にはまだ!この故郷が!タラの大地が残っているじゃないかと!握りこぶし作って立ち上がるわけです。そこで流れる雄大な音楽!赤い夕陽と暗いシルエットの美しい映像!!最高としか言えない。

 

このド根性節によってエモーショナルが最高潮に高まった時、前編は幕を閉じます。

ここまでの100分は全てこの展開の為の前振り。連続した時間の中での、一瞬の精神的見せ場。これぞ映画という感動を味わいました。

抗えない歴史の波に飲まれつつも適応して生きていく…自由奔放唯我独尊だった人物が利他的行動をするようになる…絶望の底の底に落とされた人が一縷の望みに全てをかけて文字通り立ち上がる…これらはアメリカ人だけが共感できることではありません。全世界の言葉が異なる人でも分かる、人間の精神が最も輝いた瞬間、尊厳ある瞬間なわけです。別に南北戦争時代だから特別なわけじゃないでしょう。日本で言っても、例えば震災後の状況等と非常に近いわけです。今作が日本で公開されたのは1950年代らしいですが、その時期は戦後復興期であり、その当時の日本人達にとっても自分事に感じられる物語だったのではないでしょうか?

 

堕ちたのであれば、這い上がるしかない!!頑張るしかない!!!川の底からこんにちは!!!!!

 


川の底からこんにちは/木村水産 社歌

 

しかし、誰もが弱気になり父親が狂ってしまう程の事態に対して、立ち向かえる強さと知恵を持っていたことが、結果的には彼女を苦難の道へと誘ってしまう…。結局の所愛するもの全てを失うのですから、もしかしたら諦めてしまった方がいいんじゃないか…そう思ってしまいます。「誰が悪いわけではない。努力の結果なのよ。」とは劇中の台詞ですが、何たる辛い言葉…。

 

決してハッピーエンドで終わらず、時の流れと人の業によってこんがらがっていく人間模様というのも、大河ドラマの大きな魅力ですね。

 

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■濃厚な百合

前項では普遍的な面白さについて書きましたが、ここでは今!今観たからこその発見を。

 

題にもある通り、今作では非常に濃厚な百合…つまり女性同士の強い強い精神的繋がりが描かれているんですよ!主人公スカーレットと、彼女が愛していたアシュレーと結婚したメラニーとの、愛憎入り混じる百合が!!

 

ブロマイド写真★『風と共に去りぬ』ビビアン・リー/白黒/アップ/スカーレット・オハラ

スカーレット・オハラことヴィヴィアン・リー

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メラニーことオリヴィア・デ・ハヴィランド

 

風と共に去りぬ」は基本的にスカーレットのアシュレーへの身勝手な愛、そして結果的にアシュレーを奪うこととなったメラニーとの奇妙な共同生活が軸になっています。

スカーレットとメラニーはとにかく正反対で、前者は前述の通り自由奔放で妹の彼氏を当てつけの為に奪い取るような人物であるのに対し、後者は包容力と純真さを持つ聖母の様な人物。スカーレットがメラニーに対して非常に回りくどい嫌がらせをするのだが「スカーレットはそんなことしない」と信じ抜いている。

 

しかしアシュレーが南北戦争に赴く際、スカーレットは彼からメラニーを支えてくれと頼まれます。気持ちが届かなくとも愛するアシュレーの頼みですから、生活が困窮する状況でもメラニーを守り抜いていきます。もうこの関係性がいい。憎っくき恋敵(しかも相手は無自覚)を、愛する人の願いの為に守らなければならないというジレンマ。しかもメラニーが無償の信頼、愛を向けてくるので、悪い気もしない…。だがアシュレーへの思いも捨てきれず、奴も奴でまんざらでもないので抱き合ったりしてしまう…。じゅるり。

 

南北戦争中、そしてその後の苦難の道を共に歩み、皆がスカーレットの手段を選ばない姿勢を非難する中でも彼女を支え続けたメラニーだが、最終盤で命を落としてしまう。今際の際、スカーレットへ「息子とアシュレーを頼みます…」と約束を託す…出兵前のアシュレーの様に。もしかしたら、メラニーはスカーレットとアシュレーの関係を分かっていて、それでもなお二人を愛し続けていたのかしれない…。そしてスカーレットは、自分がメラニーを愛していたことに気付く…。

 

母を失い父が狂ってしまったスカーレットにとって、気高く麗しい精神を持ち決して揺るがなかったメラニーは、精神的支柱になっていたことでしょう。そんな彼女もまた、失ってしまった…。そして夫であるレット(メイン所なのに今初めて名前を出した!)もスカーレットから去ってしまう…。

 

4時間近い今作のクライマックスにおいて、スカーレットと最も強く結びついていたのがメラニーだったと分かる展開を持ってくる。男女だけでなく女同士でも思い思われの関係性はあるし、なんなら男女間よりも強く強く結びついているのだと。愛の実感、そして喪失をアシュレーからではなくメラニーから受け取ったスカーレットは、レットへの愛を成就させるべくタラへ戻る…ここで今作は終わります。これを百合と言わずに何と言うのか!!!!愛情というものの多様性についても示している映画であると思います。

 

 

■〆

またツラツラ長く書いてしまいましたが、ここらで〆。

確かにアメリカの暗部を隠し美化している点は批判されてしかるべきですが、現代の視点で観ても立ち上がる人間の素晴らしさ、思い思われ関係の妙、そして何より歴史の中を逞しく生き抜いた女性の物語として必見だと思います。テンポも良いので4時間全く飽きないし。おススメです!配信サイトでバンバン観れるよ!

 

風と共に去りぬ (前編)(字幕版)

風と共に去りぬ (後編)(字幕版)

 

www.netflix.com