漫画:古見さんは、コミュ症です。 ~気遣いのヒーロー~
こんにちは。
光光太郎です。
今日はちょこっと漫画をご紹介。週刊少年サンデーで連載中の
です。最新14巻が発売中の人気コメディ?漫画。
今回書くことは大体1話を読めば分かることなのでWEBサンデーの試し読みをするのがおススメです。
なぜ紹介するか?それは今作が「日常に根差した正義=優しさ」を絶妙なバランスで描いているからです。
■コミュニケーション漫画
今作のあらすじをWEBサンデーから引用すると…
古見さんは、コミュ症です。なので人付き合いがとても苦手です。でも友達が欲しい古見さん。人の気持ちを察するのが得意な只野くんが友達になり、その伝手で少しずつ友達がふえ、高校生活がだんだん楽しくなってきました。2年生になった沈黙の美少女・古見さんのコミュ症コメディー!!
主人公であるコミュ症こと古見硝子(こみ・しょうこ)が、テストも身体能力も全て平均値である只野仁人(ただの・ひとひと)と友達になったことをきっかけに、様々な人物と友達になっていこうと奮闘するお話です。*1
つまりこれはコミュニケーションについてのお話なんですよ。
古見さんは男女問わず振り向いてしまう程の超絶美人。無口で凛とすました雰囲気に皆やられてしまい「神」と敬われていたり。その為周りからは羨望の眼差しを向けられるものの、一歩距離を置かれています。しかし実際は、人前では緊張しすぎて喋れなくて、誰かと一緒にいたくとも話しかけることが出来なかった…ずっと孤独だったんですね。
周囲の人々は古見さんを嫌っている訳ではなく「凄い人だ」という先入観をもっているだけ。その先入観が、古見さんを傷つけることになってしまった。
とある方法を取る以外は殆ど話せない古見さん。飲食店では凝視された店員が勝手に察してメニューを作ってくれることが殆ど!
これは別にコミュ症限定の話ではない。主観と客観の違いからくるコミュニケーションのズレという、普遍的で身近な話なんですよ。そしてそれは、誰もが悪くなくとも誰かを傷つけることもあると。
■ 日常の正義、身近なヒーロー
そんな彼女を救う、初めて友達になるのは「普通の人」である只野くん。
彼は何をしても普通で、中学時代に厨ニ病になるほどオーソドックスな人物だと言われる。クラスでもさほど目立っていない。普通の人なのだ。だからこそ彼は、普通に誰かを気遣うことが出来る。
ひょんなことをきっかけに古見さんがコミュ症であると知り、黒板で筆談を始める2人。古見さんから秘密を打ち明けられた彼は、謝罪して去ろうとする古見さんへ「言葉」を返す。
「はい」と答える古見さん。その後2人は黒板を埋め尽くすまで筆談=会話を続け、友達になります。只野くんは古見さんの「友達100人作り」を手伝っていくことになる…。
正直ね、泣きました。こんな見事な演出があるかと。
本音をさらけ出した不器用なコミュニケーションが、ささやかな願いが他者へ通じた瞬間。苦しんでいる人を助けようと一歩踏み出した(気の利いた)勇気。ヒロイックな行為は日常でも描けるんだとね…。そしてこれらを「普通の人」の象徴にやらせる意義。まぁ話が進むごとに「気遣い」が超能力レベルに達するんですが、これは「信じたい綺麗事」の寓話でもあるので、これでいいのだ!!
やたらと重い感じに書いてますが、実際読んでみると非常に軽快。只野くんと、そして2番目に友達になる長名なじみ(性別不詳)らと共に、一癖も二癖もある人物達と友達になっていく様子を、ギャグ8割感動2割という感じに構成しているので実にバランスがいい。構成の巧みさは特にコミックスで如実に分かるでしょう。
kindleでは無料お試しもやってるぜ!
■極端さと多面性
コミュ症の古見さんが誰かと友達になるのは簡単なことではありません。あがり症な上理さん、ヤンデレな山井さん、厨ニ病な中々さん、おねぇさん気質な尾根峰さん、ギャルの万場木さん…そもそも誰もが個性を持っているのだからすんなりとコミュニケーションを取れるわけはないのです。時には個性が災いして事件を起こし心を傷つけることも。でも、だからと言って個性「だけ」が性格の人なんているわけもない。誰もが多面性を持っているからこそ、人付き合いは面白い。
面白い変化を遂げるのは、古見さんが好きすぎる山井恋(やまい・れん)。最初は行き過ぎた思い故に邪魔な只野くんを監禁するなどした彼女ですが、自分のイメージではなく現実の古見さんと向き合い話した結果、友達になりました。
その後もヤンデレ行為は尽きないものの(巻を追うごとに作者がエスカレートさせており、少年誌でやるのはギリギリな場面も…)段々と異なる面が見えてくる。意外と博識だったり自分磨きに余念が無かったり、それこそ古見さんが嫌がり傷つくようなことを控えるようにしたり。
この漫画はとにかくキャラクターが多いのでここまで細かく描かれるのは稀なんですが、そんな枠に山井さんを当ててるというのがいいなと思うわけで。まぁ難しい話は抜きにして、とにかく縦横無尽に動きまくる山井さんは見ていて本当に面白い。
今注力されている万場木さんと友達になるのは10巻。
適切な気遣いという、現実の絶対正義。ヒーローを産むからこそヒーローである構図。泣く。
■電子書籍向き?
水曜Sunday!!
— オダトモヒト (@ooodaaaatooo) July 31, 2019
『古見さん』載っとるやん!!
今週は体育祭中編!お弁当忘れた只野くんがみんなに餌付けされるお話!ぎぎぎうらやましい…僕もあーんしてもらいぎぎぎ…
今週もよしぎぎぎ…
ぎぎぎ… pic.twitter.com/m1r1QrI5JT
今作のコマ割りというかページ構成は非常に独特だ。
・1週の連載の中で複数の小話を入れる
・1ページ毎に何かしらオチが付く
・横長4コマで構成されたページが多い
・見開きを利用した演出はここぞという時だけ
ちょっと読んだだけでもこの4つの特徴が分かるだろう。スマホや電子書籍で読むことを意識しているのではないだろうか?WEB上でなく週刊誌で連載していることを考えると挑戦的だ。しかも1ページ毎表示の方がドラマチックになっている場面もある。
例えば1話のこのシーン。紙媒体だとこう見えるが
感じ方は人それぞれだとは思うが、私は1ページ毎表示の方が只野くんの表情や返し言葉が印象深く目に飛び込んできた。「漫画における筆談」という、静的かつジャンプカット的な表現だからこそなのかもしれないが。
こういったいページ表示の工夫を凝らした漫画だと、現在WEBで連載している「キン肉マン」や「働かないふたり」が挙げられるだろう。前者については作者が言及していたし、後者はそもそも縦読みである。
「働かないふたり」も「日常に根差した正義=優しさ」のお話だと思う。
■〆
どうやってもブログを短く終えることは出来ない性分なのか…!そろそろ〆です。
コミュニケーション漫画であることや気遣いの尊さ正しさについて書いてきましたが、そういう視点を抜きしてギャグ漫画ラブコメ漫画としても無類に面白いのだ!そしてとにかく美麗作画に酔える!
正直ギャグの構成は天丼気味だがあまりのテンションの高さ極端さに笑ってしまうし、古見さんの筆談は笑いも感動も生んでくれる漫画だからこそ出来る表現で最高だし、古見さんと只野くんの関係性も萌える(終わらない焦らし地獄)。
とにかく!kindleの試し読みかオダトモヒト先生のTwitterをフォローして美麗作画を一見して欲しい!是非!
*1:※因みに登場人物はほぼ全て「名は体を表す」になっています。コミュ症だから、こみしょうこ。みんなの幼馴染だからおさななじみ。この他にもよく考えたなと膝を打つ名前が目白押しで、お気に入りは米谷忠釈(こめたに・ちゅうしゃく)。なんにでも※付き注釈を挟んでしまうやつだ。