ゲーム:ファイアーエムブレム風花雪月 ~関係性萌えシステムを逆手に取った残酷戦記物~
こんにちは。
光光太郎です。
今回は最近ハマっているゲーム
ファイアーエムブレム風花雪月
について。ネタバレするが、ネタバレなんか問題ないパワフルさと現代性がある素晴らしいゲームだと思います。
風花雪月、ヒルシュクラッセ終わった。キャラゲー要素を完全に逆手に取った戦争パートからが本領発揮。生徒を殺さざるを得ない戦争に心が病みかけるし、神々が及ぼしたエぐ過ぎる副産物にげんなりもする。でも、全部ひっくるめて熱さに変える骨太なシナリオにやられた。面白い。
— 光光太郎 (@bright_tarou) 2019年8月22日
■今作のあらすじ
あらすじを公式サイトから引用する。
士官学校の教師として担任する学級を選び、生徒たちを育て、導いていく第一部。
そして士官学校での日々から五年後、三国が相争う戦争を、三国それぞれの立場で描く第二部。
激動の時代を生きる若者たちの成長と共に、
フォドラ全土を巻き込む戦乱のきっかけから結末までを、二部構成の物語として描きます。
主人公は帝国(アドラークラッセ)、王国(ルーヴェンクラッセ)、同盟(ヒルシュクラッセ)から選んだ勢力に加わり、生徒たちと共に教育や戦闘に身を置いていくことになる。
一部は言わばハリポタで、二部は戦記物。この二部構成こそが本作最大の特徴であり、最近のファイアーエムブレムを親しんできたファン達への痛烈な(嬉しい)カウンターパンチになっていたのだ!まぁそもそも私も「if」から入った新参者なのだが。
初めて徹夜して遊んだゲーム。支援レベルを上げる作業のためにキャッスル戦をしまくった。多分マップ攻略よりもキャッスル戦の時間の方が長い。
■支援会話システム=関係性萌え
ファイアーエムブレムを象徴するシステムの一つに「支援会話」がある。キャラクター同士の好感度を上げると特別な会話が見れるようになるのだが、この数が非常に多い。ヒルシュクラッセのキャラクター同士の支援会話だけで80種類ある。これが三勢力分あるので簡単計算で240種。しかも学級を超えての会話や先生たちとの会話もあるので、合計で何種類になることか…。
「if」をプレイした際にはとにかく支援会話を全部出したい一心だった。こいつとこいつが話したらどうなるだろう?一体どんな関係性を築くのだろうか?結婚させたらどんなプロポーズをするのか…。どの親を持ったら子供たちはどんな会話をするのか…。
そんな「関係性萌え」の沼に引きずりこまれたのはファイアーエムブレムからだろう。
ファミコンのリメイク。結婚は出来ないが育成が面白い。支援会話はあんまり覚えていない。ナデナデは出来ない。
今回は学園モノ!という初報を聞いた時は正直失望していた。「関係性萌え」に振り切りギャルゲー要素を強めたゲームになるんだろうと思ったからだ。
しかし!そんな甘くは無かった!!「関係性萌え」を期待し支援上げに勤しんだプレイヤーを待っていたのは、フォドラ地方の闇に苦しむキャラクター達の姿だ。
■支援会話=人生に触れる一部
最初の支援会話はギャルゲーみたいなキャッキャウフフっぽいのに、進んでいくとほぼ全てのキャラクター背景に政略結婚宗教闘争家督争い人体実験王位継承権領地争い多国間抗争DV身分差別等があって非常に辛い。
— 光光太郎 (@bright_tarou) 2019年8月28日
プレイした方はフォドラが架空の場所だとは思えなくなっているのではないだろうか?
それほどまでに、大陸の歴史をガッツリと作り込んでいるのだ。多国間競争、宗教&神話、他地方との争い、民族差別、身分差別、才能の有無による家督争い…。きな臭い上に解決が難しい問題を全部ぶち込んだようなカオスであり、現実そのものだろう。
この現実を、仲間になる生徒たち一人一人が背負っていると分かるのが、今作の支援会話だ。
ファイアーエムブレム風花雪月、継承者が現れるまで子供を産ませ続けるって、、閉口してしまった。
— 光光太郎 (@bright_tarou) 2019年8月25日
こんな話は序の口で、暗殺事件の報復によって滅亡させられた民族の生き残りとその
事件によって婚約者を殺された女性の支援会話があったり、よりよい家に嫁がせるため教育DVを受け続けたことを吐露する生徒がいたりと、しんどい話が山の様にある。萌えに漬かってきた身としては、非常に辛い…。
しかし、暗い話ばかりではないのも現実だ。辛い境遇の中でも支え合って、時には必要以上に触れず理解するだけで、またある時には趣味を共有して…もがいて前へ進もうとする姿を垣間見える支援会話もある。関係性萌えだけに終わらない、キャラクター達の人生そのものを体験できるのが、今作の支援会話なのだ。
同盟側の支援会話で一番好きだったローレンツ君。最初こそ貴族の特権階級やプライドを振りかざすクソ野郎かと思ったが、実際は「自らが理想とする貴族」を実践しようとする気高い男だった。階級に囚われず相手の実力を認め徴用し、平民は命がけで守る。
また、選んだ学級以外の生徒とも支援会話を行うことは出来るし、条件を満たせば自分の学級へ迎えることも出来る。勿論会話だけでも全く問題ないので、どんどん仲良くなって支援会話を楽しんでもいいのだ。システム上は…。
初回プレイでスカウトした2人。ごめんな…。
■戦争=殺し合いを痛感させる二部
第一部から五年後の第二部では三勢力が本格的な戦争状態に突入する。第一部の舞台だったガルグ=マク修道院も崩壊し、生徒たちも散り散りに。主人公は最初に選択した勢力と行動を共にし、フォドラの戦雲へ挑んでいく…。
ファイアーエムブレムは元々「死んだら生き返らない」システムが特徴。いくら愛着を持って育てていても、采配ミスで倒されてしまったら最後。二度と自軍に戻ることはない。最近のシリーズでは「倒されたら撤退扱い」にするカジュアルモードがあり非常に遊びやすくなっているが、緊張感が無いと言われがちだった。しかも制限付きで時間を巻き戻してやり直すことも可能と、最早なんでもあり。死は撤廃されたかに見えた。味方限定で。
前述したように戦争状態なので、自勢力以外とは戦うことになる。つまり、他学級にいた生徒達と戦場で殺し合いをする。平民から騎士になる夢を持っていたアッシュを、引き籠りだが可愛かったベル公を、おっとり年上おねぇさんのメルセデスを、努力家のアネットを、私は殺した…。同盟を救うために、殺した…。カジュアルモードだから撤退扱いになるなんてことはない。人生を語ってくれた子達の未来を永遠に奪ったのだ。
スカウトしていた上記の2人、帝国側のペトラと王国側のフェリクスは最初から同盟側について戦ってくれたが、それはつまり元々の勢力と殺し合いをさせることになる。第二部になって出撃数が減ったのは言うまでもない。だが、インターミッションで会話してみると、かつての仲間や主君への思い、無念を語ってくる。スカウトしない方が幸せだったのだろうか…。
聞くところによると第二部になっても条件次第でスカウトができるらしいが、私は全員皆殺しにしてしまった。一人も救うことは出来ず、人殺しと罵倒されながら二勢力を滅ぼした。
第一部で他学級の生徒達と会話をしまくっていたプレイヤーほど、関係性萌えをしゃぶりつくそうとしていたプレイヤーほど、このあまりに悲惨な翻りに戦慄したはず。戦争の悲劇を文字通り追体験させられたのは、このゲームが初めてだ…。
では同盟が負けるように戦えばよかったのか?そうも思えない。なぜなら同盟側にも譲れない正義があるからだ。そしてそれは帝国、王国も同じであろうことが、二週目プレイで分かってきた。三者三様の思想のもと、守るべきものの為に殺し合っている。避けようのない悲劇、逃げ道のない感情にもうお手上げだ。
■今、語られるべきゲーム(そして〆)
ファイアーエムブレム風花雪月、信仰心と差別意識と歴史が引き起こしてきた悲劇を多様性の坩堝に集った者達がもがきながら打破していく話なので、今に作られるべきゲームだと思いましたね。子供たちにも、たとえ今わからなくとも是非触れて欲しい。
— 光光太郎 (@bright_tarou) 2019年8月28日
ファイアーエムブレム風花雪月は本当にしんどいゲームだ。
キャラクター達の背景は重いし展開も非情で甘えはない。現実世界の問題、差別や家族関係という身近な問題も支援会話で叩きつけてくる。
しかしだからこそ、支え合い困難に向かっていく物語に手に汗握ってしまう。まだ同盟側しかクリアしていないが、恐らく全勢力に通底するテーマは「抑圧を多様性で打ち破る」ことなのではないだろうか。同盟側が打ち破る抑圧は「鎖国的な体制=フォドラの歴史」であり、それを成すのはバラバラなルーツを持つ者達だ。
(多分帝国側では「人間を神々から解放する話」になる気がする。王国はまだ掴めず…。)
ナショナリズムからグローバリズムへ、価値観の刷新へ。戦略シミュレーションゲームという形式を最大限活かし、極めて現代的なテーマに挑んだゲームだろう。
というわけで王国側で絶賛二週目プレイ中です。時間が足りないぜ!