光光太郎の趣味部屋

Twitter感覚で趣味や心情、言いたいことをつらつらと。

映画:続・男はつらいよ ~鬼畜人情物語~

こんにちは。

光光太郎です。

 

最近は「男はつらいよ」か「HiGH&LOW」しか観てません。てなわけで今回は「続・男はつらいよ」の話をば。

 

f:id:bright-tarou:20191026222512j:plain

www.cinemaclassics.jp

 

 前作「男はつらいよ」でも結婚や恋に関する見事な物語構成に唸ったが、今作では更に磨きがかかっていた。そう思うのは、寅さんを結構追い詰めるからだろうか。前作から三か月後公開とはとても思えない…。

 

前作では段々と寅さんへ感情移入させる作りだった。対して今回は「可哀そうな寅さん…」という気持ちにさせる導入で始まる。観客は早めに登場するマドンナと同じ、懐かしい友人の悪ガキっ子を見守る視点になるだろう。まぁその悪ガキ具合が、前回以上にハチャメチャではあるのだが(笑)。

まぁともかく、寅さんを見守る映画である、ということだ。

 

 

今回のテーマは、ズバリ「親子」だ。父に会い、母に会い、父と別れ、また母に会う。それだけの話なのだが、一切無駄なくドラマを積み、瞬間最大風速の「静かな感動」をぶちかますのだ。

 

前述した冒頭は、寅さんが母親の夢を見ることで始まる。今回の寅さんは「子」なのだ。そして疑似的な「父親」である先生と、生き別れになっていた産みの「母親」。

寅さんは先生によく懐く。何故なら理知的に自分を叱ってくれ、思ってくれる存在だからだ。しかし母親には絶望してしまった。せっかく会いに行ったのに、一言せめて「お母さん」と言いたかっただけなのに、残酷に追い返されてしまう。支えてくれる疑似親と、突き放してくる実親…えぐい対比だ。

(すっかり傷心の寅さんがとらやに帰ってきてからの「絶対『母親』って言葉を言うなよ!」から始まる怒涛のコメディシーンはベタながら最高!!)

 

しかし山田洋次は甘やかさない。

寅さんが慕った先生は、彼の心の父親は老衰で亡くなってしまう。しかも、マドンナに思い人がいることを知ってしまうのだ…。今回の寅さんはよく泣くが、窓辺に座りさくらと共に泣く姿が本当に辛い…悲しみに飲まれ、弱音を吐き、涙を流すしかない…。

 

しかし、山田洋次は人情の監督でもある。

ラスト、結婚旅行で関西に訪れたマドンナは、あの母親と口げんかしながらも共に歩く寅さんを、母親を「おかぁちゃん!」と呼ぶ寅さんを見る。傷ついた彼が助けを求めたのは母親であり、それを母親は受け止めた…。しかし、寅さんが再び元気に歩く姿を、先生が見ることは永遠に無いのだ…。

 

一切説明台詞を使わずにドラマを連想させる手腕が見事すぎて、少し泣きました。親子の愛が確実に存在することを示す感動的なラストだけでは終わらせずに、子の幸せを知ること無く去っていく親の哀しさ寂しさも添える様なバランス感覚こそが「男はつらいよ」シリーズを決して単純明快な話にさせないキーポイントなのかもしれない。