光光太郎の趣味部屋

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映画:帝都物語

帝都東京を舞台にした霊的な攻防を日本史に絡めて語りついでにロボットも出る、どう見てもサクラ大戦の元ネタ筆頭だ。陰陽術、ストップモーション式神軍団や豪快に壊されるミニチュア、スモークと照明の合わせ技、何よりも嶋田久作演じる加藤の迫力等、ビジュアルが強い。


wikiによると原作小説や今作によって陰陽道や風水がエンタメにやってきたらしい。そのためか地脈や血の繋がりといったルール説明が丁寧に行われている。特に地脈は見せ場に直結するから全編通して説明されっぱなしだ。だが源平合戦から続く霊的現象が我々の足元にこそあるのだというのはロマンだ。


地脈は「東京は何を捨てて何を得て近代化していくのか?」というドラマでも目立つ。霊的要所に東京はあるものの、近代化が進む中で陰陽道は軽視され衰退が待っている(祈祷師の中にジェフ・ゴールドブラムこと大塚芳忠が!)。しかし魔人加藤は正に霊的な攻撃によって帝都を滅ぼそうとしている…。


加藤の攻撃は明治大正昭和と続くが、東京はどんどん近代化していき遂に地下鉄計画まで始まった。地脈を犯してまで開発を進める社会で繰り広げられる霊的な攻防には一抹の寂しさ悲しさがある。社会は捨てた事にすら気付かないものによって滅んでいくのか、、


時代の終焉を東京の土地を用いて物語るには大規模なスケールが必要だ。時には緻密な時代考証で作り上げた東京のオープンセット、時には関東大震災の惨状を示すミニチュアワーク等、画の作り込みは今見てもちゃちくない。また、地脈の大きな連なりを感じさせる大連の話も良かった。


演出まわりで言うとストップモーションアニメで命を吹き込まれる式神も素晴らしい。一体一体の登場時間は決して長くないのに何種類も登場するのが凄い。どれだけ手間がかかってるのか…ちょっとぎこちない動きが「無理やり誕生させられた不自然な命」の表現に繋がっていて不気味さが増す。


更に化物関連で言うと、女優のガッツで成立しているあの「嗚咽虫」!!キモすぎる!!男性からの性的な侮辱攻撃を悪辣に造形化したみたいな。ビジュアルでガンガン押していく今作の気合いがビンビンに伝わってくる。何か食べてたら吐くぜ!!


更に更に、學天則という昭和初期に実在したロボットの登場!展覧会で芸を披露しているはずが、ひょんなことから鬼が犇めく洞窟へ突撃することになる學天則。鬼共からボコボコにされた挙げ句「こんなこともあろうかと」搭載されていた自爆装置で地脈をぶっ飛ばす!ネタ要素の塊だが、最後は悲哀あり…。


役者陣では軍服の魔人、加藤を演じた嶋田久作がMVP。やせ型ながら肩幅のデカい長身で縦長の顔にデカイ手で鋭い眼光と、佇まいは正に魔人だ。映画初出演とはとても思えない(この後大誘拐ではコメディをみせる)。原作者が抱いていたイメージを書き換えるハマり役だったらしい。


他の役者陣は東宝ということでゴジラ役者が多い印象。ビオランテの博士とかね。でも劇中時間が10年以上経っているにも関わらずあんまり見た目の変化がないのは正直戸惑った。勝新太郎はぼそぼそ声過ぎてよく分からん…。よくも悪くも男優軍団は嶋田久作インパクトに負けてしまっているかな。

女優陣では加藤へ霊力タイマンを挑む原田美枝子がカッコよく美しい。ドスを構えて念仏?を唱える姿なんか堪らないね。馬鹿げたシーンを真面目にやれば殺気も魂も宿るのだ。