光光太郎の趣味部屋

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映画:パーフェクトブルー

怖かった。

この手のサイコホラーは見慣れてたが、現実と虚構の揺さぶりがあまりに自然に、短いスパンで繰り返されるのでクラクラしてしまった。サイコホラーといえばサイコだろ!というオマージュにだけホッとする。いや、ニューロティックホラーか?まぁいいか。


なりきりサイトとか狂信的なオタとか、SNSが発達した今観るからこそ恐ろしい描写も多い。むしろより生々しく感じられるはずだ。パソコン通信がまだまだ一般的で無かった時代に、仮想世界で拡張され複製される人格の恐怖をここまで描けるとは……サイバーパンクSFとしては古くからある設定なのかもしれないが、ニューロティックホラーへ落とし込むとこんなに怖いのか。


どこからが真実なのか、最後も真実なのかすら分からない。現実と虚構では千年女優とも被るけど、こちらは暗黒版で全くポジティブではない。分裂する自我、他人に作られていく自分、歪んでいく主観…オカルトじみた話も出てくるがそれは理解できない現象に勝手な理屈をつけるようなもんで、結局は不確かな自我の恐ろしさへ帰結する物語だと思う。

様々な意見が飛び交い意識のアップデートが叫ばれるSNSと旧態依然とした現実、コロナへのリスクを叫ぶものの人混みを生み出し続ける社会……むしろ自我を分裂させる術を身に付けなければ、今は生きづらくてしんどいのかもしれない。


映像で言うと、終盤のおいかけっこでの上下の空間の広がり方がいい。逃走アクションへ切り替わったのかと思いきや、おかしい挙動でどこまでも追いかけてくるのはやはりホラーであり、恐ろしさは目減りしない。編集では、前後の動きを一致させて繋ぐことで別々の場面にも関わらず滑らかな映像になってるのが堪らなく好きだ。なによりテンポが抜群にいい。