光光太郎の趣味部屋

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映画:パシフィック・リム アップライジング ~惜しい!もう1作!~

エイリアン2という映画がある。

宇宙でしっとり怖いホラーをやったリドリー・スコット監督の大傑作「エイリアン」の続編なのだが、SFクリーチャーを相手にした戦争モノへとジャンルシフト。ツボを押さえた燃えポイントを各所を配置し「コマンドー」ばりの準備シーンを見せたかと思えば最後にロボットVSエイリアンをぶつけるという、ジェームズ・キャメロン監督らしいサービス精神の権化のような映画になった。1作目とは全く異なる魅力を持った最高の続編映画の1つと断言できる。どちらも両監督の色が強く強く出ているからだ。

 

今回は「エイリアン2」と似た境遇、強烈な作家性を持つ映画の続編である

 

パシフィック・リム アップライジング

 

の感想を書いていきたい。

 

pacificrim.jp

 

www.pacificrimtickets.com

 

 

雑感へ行く前にまず、簡潔にでも「パシフィック・リム」という作品の偉大さに触れておきたい。巨大ロボットVS怪獣をハリウッド体制で映画にした、してくれた歴史的な1作だ。これまでも怪獣映画、巨大ロボット映画はあるにはあったがパシリム並みに巨大なロボットと巨大な怪獣を滅茶苦茶デカいと感じられるように映し、とんでもなくカッコよく撮ることに焦点を当てて作られた映画は他にないだろう。カッコよすぎるデブオタク監督、ギレルモ・デル・トロに足を向けて寝られるロボットオタク、怪獣オタク、特撮オタクはいない。

 

パシリムが如何に偉大な作品であるかについて詳しく知りたい方は次のブログ記事を読んでみて欲しい。また、上述の太字事項について詳しく書かれた箇所を下に引用する。

blog.goo.ne.jp

この作品はよく「ロボットと怪獣が戦うだけの映画」と評されるけど、単にそれだけではないと思っている。その「だけ」を気持ちよく成立させるために、人物関係やプロットの無駄を削ぎ落とし、非常に洗練された流れで観ている側にモヤモヤを抱かせず真っ直ぐに拳を握らせるように構成されているからだ。「ドッカン!ドッカン!はい終わり」、ではない。その「ドッカン」を、いかに本気で魅せるか。そのために、「ドッカン」以外の部分にも相当に気が配ってある。だからこそ、この映画は単なる「映像すごかったね」だけではない魅力に溢れているし、その界隈の人々の心をガツンと掴んだ。

 

 

そんなパシリムの5年ぶりの続編が「パシフィック・リム アップライジング」だ。

デルトロが監督しない、スター・ウォーズジョン・ボイエガスコット・イーストウッドが主役、東京に集結する新世代イェーガー達のあまりのカッコよさ、及び動きの軽さ、何よりも劇場長編初監督の方が手掛けるという事実……不安と期待が入り混じった中で迎えた鑑賞体験は、はっきり言って、微妙なものだった。

 

ロボットや怪獣たちのキメ映像では前作に劣り、かといってロボットアクションでは「トランスフォーマー」シリーズに劣る。どうしても、似た作品群の強烈な個性に埋もれてしまう。「続編」としての作り方にも粗があるのは確かだ。

しかし、だがしかしだ。駄作と言って切り捨てることは絶対に出来ない。スティーヴン・S・デナイト監督が抱く「俺のやりたいパシリム」は痛いほど伝わってきたからだ。巨大特撮をCGでやることに拘ったデルトロとは違い、ハチャメチャにカッコいいロボットアニメをやろうとしたのだと思う。

 

 

今回は悪点と良点について、それぞれ触れていくことにする。まず悪点だが

①キメ映像までのタメがない

②キャラ立てが弱い

の2つが個人的には大きいマイナスだった。逆に言うと、前作はこの2点があまりにも上手かったのだ。

 

 

最初に①について。今作でのキメ映像といえば予告でも散々使われていた、4体のイェーガーがそろい踏みして戦闘態勢をとる場面だろう。前作では良くも悪くも主役ロボットであるジプシー・デンジャーが目立っていたので、これはいい差別化である。が、そこまでのタメや前振りが全くないのだ。全てがあっさりと進行していく。

 

原因を考えてみよう。前作のタメで印象的だったのは、香港決戦におけるジプシー・デンジャー登場までの流れだ。2機のイェーガーは倒されストライカー・エウレカも電磁パルスを受けて行動不能。絶体絶命の危機に動けるのはアナログで原子力のジプシーだけ!強烈なバックライトを浴び、満を持して戦場へとやってきたジプシー。ライバルキャラの「いけぇ!ジプシー!ぶちのめせぇ!!」からテーマ曲が流れての、ジプシーとレザーバッグの戦闘開始!!!!何度見てもブチ上がる最高のシーンだ。

 

絶体絶命の状況、ジプシーだけが立ち向かえるというお膳立て、登場シーンの外連味、台詞による応援、そしてテーマ曲…すべてが混然一体となった見事なタメだ。

 

では今作のキメ映像までの流れはどうなのか?東京での怪獣軍団との戦いが続く中、敵に洗脳されたニュート博士によって小型怪獣が解き放たれる。3体の怪獣と無数の小型怪獣達は合体をし、超合体怪獣へ変貌を遂げた。唖然とするメンバーを鼓舞するジェイク。各イェーガー達は各々の武器を取り出していく。そして超巨大怪獣めがけて突撃!!ここからが本当の戦いだ!

 

あれ、文字に起こすと無茶苦茶熱い場面だな…(笑)。今作は見せ場がありすぎて1発の爆発力が弱くなってしまったのかも。この前にも、東京へ降り立ってからの集合シーンがあったし。そこからそろい踏み突撃まではあまり時間が空いていないし…。やはり「あっさり」という言葉が出てきてしまう。キャラクター描写、ロボット描写、怪獣描写共にキメ映像までの積み上げが不足しているので「あっさり」と見えてしまうのだ。

 これは②のキャラ立ての弱さにも関わってくる。

 

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続いて②だ。前述した通り、ロボット=イェーガー描写もキャラクター描写も非常に薄い。そもそも主役機であるジプシー・アベンジャーですらあっさりと出てくるので、全く盛り上がらない。そもそも何故ジプシーなのか?ジプシー・デンジャーの後継機なのかどうかすら語られないので、単なるマシンにしか見えないのだ。他の3機、セイバー・アテナ、ブレーザー・フェニックス、ガーディアン・ブラーボも序盤にちょろっと出るだけで、後は最終決戦になってしまう。

 

前作の脇役3機体もさほど活躍したわけでは無かったが、ペントコスト司令官による熱のこもった解説と明確に差別化されたデザインラインと単色カラーリング、「最強の3機」という設定、そして何よりも「必殺技」によって、ジプシー・デンジャーに負けない魅力があった。

 

今回の3機も序盤に解説はあるし必殺技もあるし、活躍シーンはむしろ前作よりも増えている。なのに、全く目立っていない。思うに、各々が何に長けたイェーガーなのかがよく分からないからだろう。設定はあるのかもしれないが、上手く見せられていない。ジプシー・アベンジャーとセイバー・アテナはともかくとして、ブレーザー・フェニックスとガーディアン・ブラーボは武器が異なる同系機に見えてしまう。「最強」という枕詞が無くなり単なるイェーガーになってしまったことも痛い。この4機が揃えば絶対に地球を守ることが出来る!!とは、思わせてくれないのだ…。集合場面をキメ映像にするならこういうお膳立てが絶対に必要だったはずだ。

 

ロボットが薄ければパイロットも薄い。ジプシー・アベンジャーに乗る2人とアマーラ以外は完全に空気だ。せっかく日本から新田真剣佑が出演しているというのに、台詞殆ど無しな上にスクリーンにも姿を見せない。ロシア人女性パイロットは少し目立っていたけどそれが決戦に活かされることはないし、他のパイロットは霞同然。せめて髪型くらい全然違うやつにしてくれ!!!もはやロボットを動かすためのおまけになってしまっている。

 

前作ではジプシー・デンジャーとストライカー・エウレカ以外のパイロット達は今作以上に出番も台詞も無かったが、どう見ても裏稼業の親分と女将さんにしか見えないロシア人夫婦(奥さんの方がメインパイロットだし年上!!)三つ子の中国バスケットボーイズと、出た瞬間に強烈な個性を放つ面々だった。最強の風格を漂わせる人物達だったのだ。今作のパイロット達は殆どが訓練生なので歴戦の勇士と比べるほうが酷なのかもしれないが、だからこそ強烈なキャラ付けが必要でしょうよ!!!!!!ゲーム感覚でイェーガー乗るやつとか、めっちゃ機体にペイントするやつとか、エロい写真ばっか貼ってるやつとか、そういうのでもいいんだよ!!!!!!!(パイパイ弄りはキャラよりも言葉が勝った)

 

 

①と②についてツラツラ書いたわけだが、結局のところ、監督の力量不足なのだと思う。途中顔面のアップで繋いでた苦しい場所もあったし。ネットフリックスの大名作「デアデビル」において、タメもキャラ立ても見事に成し遂げた監督でも、劇場長編初監督作品ではこうも違うのか。

 

 

悪点がかなり長くなってしまったが、次は良かった点についてだ。

①オブシディアン・フューリー

②真昼のロボットアクション

③Mt.フジ

 

 

個人的には①が今作最大の良点だ。正体不明の謎のイェーガー。最新鋭機のジプシー・アベンジャーを圧倒するその強さ。シドニー襲撃における獅子奮迅の活躍には本当に痺れた。シベリアで割とあっさりやられてしまったのにはガッカリしたが、とにかくオブシディアン・フューリーが出てくるシーンは全てが最高だ。前作のクリムゾン・タイフーンを思わせるメカならではの挙動も良い。

 

真っ黒な敵ロボットといえば「鉄人28号」のブラックオックス。ジプシー・デンジャーの機体色が鉄人と同じ青だったので猶更だ。味方に似た黒い敵で思い浮かべるのはパンフレット等でも触れられているニセウルトラマン達だろう。ロボットであるという点では「ウルトラマンゼアス」のウルトラマンシャドーが近いか。

 

しかし、私が連想したのは、ゴジラだ。巨大な黒い怪物が海からやってくるといえば、嫌が応にもゴジラをイメージしてしまう。通信妨害をした際に出した背中のフィンは背ビレの様に見えた。何より、オブシディアン・フューリーが最後にやられる場所は氷山も見えるシベリアの極地。場所は異なるが「ゴジラの逆襲」でゴジラが氷山に閉じ込められたことと「キングコング対ゴジラ」において北極海の氷山から目覚めたゴジラのことを想起せざるを得ない。怪獣王とライバルロボット達へのオマージュを捧げた漆黒のイェーガーを嫌いになることなんて出来ないんだよ!!!

 

 

さて②だが、ここは雨降りしきる夜の戦いばかりだった前作との違いをハッキリと押し出してきた所だ。陽光がバキっと差し込む中でのロボットと怪獣の戦いは、さんざんっぱら文句を言ってきたが、やはり興奮してしまう。陰影を重視した前作は特撮的、パキっとした明るさとアクロバティックな動きが目立つ今作はアニメ的と言われているが、正にその通りだろう。無限の未来がある若き新世代達の戦いであるということも合わせて表現出来ている。底抜けの明るさ、アメリカ映画らしい馬鹿っぽさや軽さは、間違いなく今作の良点だ。

 

また、今作は惜しげもなく何度も何度もロボットアクションを出してくれる。前作は地に足付いた戦闘が多かったが、今回はビームや剣や大玉や電磁ムチ、仮面ライダーフォーゼ並みのロケットパンチ、大気圏突入パンチなど外連味が全開だ。監督はロボット自体の魅力よりもそのアクションに重きを置き、そこをこそ今作の見せ場にしたかったのだろう。

 

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③は、大いに笑わせてもらった。劇中終盤で明らかになる衝撃の事実。なんと怪獣たちは出現した当初から日本の富士山を目指していたのだ!!!!Mt.フジ!Mt.フジ!と連呼する状況を笑うなって方がおかしい。

 

レアアースが云々と理屈づけられるが、これはどう考えても怪獣特撮ロボットものを生み出し続けてきた日本へのリスペクトに他ならない。怪獣が出るなら日本、ロボットが戦うなら富士山麓パシリム世界の東京(どうみても中国っぽい)のすぐ裏には富士山があるのだ!!!!これはもう「マジンガーZ」へのオマージュだろう。「ゴジラ対ヘドラ」かもしれないけど。

 

 

 

悪点と良点を振り返ってみよう。

悪点としては、描写の積み上げによる映画的カタルシス不足。

良点としては、オブシディアン・フューリーとロボットアクション、そして富士山だ。

 

短く書くことを信条にしたこのブログで既に4000字近く書いてしまったので、そろそろ結びたいと思う。とにもかくにも、「パシフィック・リム」という奇跡的な作品に続編が出来たこと、アップライジングを盛り上げるために日本で様々な良コラボが行われたことを素直に喜びたい。パシフィック・リム」は今やギレルモ・デル・トロの手を離れて、オタク表現者達によるメディア、国内外を巻き込んだ現象となりつつあるのだ。私は今後も、この現象を応援し続けたい。

 

てか……

ネットフリックスでアニメシリーズを作ってくれ!!!!!!

 

 

 

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正直言って本編よりも面白い予告

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落涙必死の名コラボの数々

 

 

 

 

 

オモチャ!!!

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