映画:男はつらいよ ~ナーメテーター~
こんにちは。
光光太郎です。
転勤引っ越し諸々あって精神が荒んでいたころ、これはほんわかゆるゆる人情モノでも観ないとあかんなと思った。そこで途中で終わっていた「男はつらいよ」をNetflixで鑑賞。しかし、全然「ほんわかゆるゆる」では無かった!!!とんでもなく面白く、ビターな映画だった。
「男はつらいよ」観た。
— 光光太郎 (@bright_tarou) September 25, 2019
久しぶりに会ったとんでもない兄貴、それでも慕って涙を流す倍賞千恵子が超綺麗。寅さんも最初はイライラしてたけど、結婚式のエピソードで男泣き。というか皆元気な!!!
「男はつらいよ」を思い返しているんだが、3本のお話のオムニバス形式に見えるが「結婚」という軸が1本通っているし寅さんの立ち位置も変化していくので、思い出せば思い出すほど隙の無い構成だったなとため息をついてしまう。
— 光光太郎 (@bright_tarou) September 28, 2019
最初「途中で終わった」と書いたが、以前観た時は寅さんのあまりのクズっぷりに参ってしまい、鑑賞を止めてしまったのだ。20年ぶりに会った妹の縁談をくだらないマシンガントークでぶち壊すし、何より彼は女を殴る。
ほんと耐えられなかったが、最後まで観てみると、このどうしようもないお調子男を、自分にはとても不器用な人間を、好きになっていた。
寅さんはとにかく感情の動きが激しい。よく笑いよく怒り、周囲の感情をどんどん引き出していく…渥美清の強烈な演技も相まってその様自体が楽しく面白い。
しかし、何より「共感」を誘うのは、寅さんは結局「道化」でしかないことだ。道化だからこそ人を動かし物語を動かすが、道化は道化として扱われてしまう。愛の無い縁談を壊しても、妹に愛のある結婚をさせても、マドンナを元気づけたとしても、彼自身が幸せをつかむことは無い。途中でどれだけ愛や恋について語ったとしても、自分がいざ向かうと、全く上手くいかないどころか、周囲からも「そういうものだから」と言われてしまう。でも、道化だったとしても傷つかないはずがないのだ。傷心に気付いた周囲は彼を止めようとするが、時すでに遅し。傷つく度に旅に出て、笑って傷を洗い流すしかない。監督山田洋次は、寅さんを甘やかさない。最後は爽やかだが、かなりビターなラストだと思う。
そんな寅さんを、20年ぶりに会い幼少期でもそんなに思い出が無い兄貴を慕う妹のさくら=倍賞千恵子がめっちゃ可愛く美しい。振り回されつつも、どうしても憎み切れず寅さんを思い涙する姿にこっちももらい泣き。今の待ち受けは倍賞千恵子です。
「男はつらいよ」は、心のある道化、寅さんを軸にして進む人情ものだ。人の心の機微をしっかりと、さりげなく捉えている。感情移入をコントロールするのが映画というメディアの特徴だと誰かが言ったが、なるほど確かに今作は恐ろしく完成度が高く無駄が無い「映画」である。人を殴るクソ野郎のラストの笑顔に泣かされるのだから…。