光光太郎の趣味部屋

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大映特撮の夏!映画:大魔神怒る

1作目の4ヶ月後に公開された大魔神シリーズ2作目だが続編ではなく、湖に浮かぶ島で大魔神が祀られていたらどうなっていたか?というバリエーション作品だ。

湖の恩恵を受ける八雲の国へ御子柴が攻め込み、領主島民共に暴力にのまれてしまい、遂には武神像が座する神の島、土地の神域までも犯されてしまう。いよいよ領主達が処刑されるその時、清い女性の祈りにこたえるように大魔神が湖を割って姿を表す…。というのが今回のあらすじ。


下剋上で国を乗っ取った輩と戦う遺児という1作目に比べて展開は弱いものの明確な差別化が行われており、戦国時代の侵略戦争をテンポ良く描いた時代劇になっている。これはこれでスピーディーかつサスペンスがあっていい。

また、今回の大魔神の役柄が八雲の土地神であるのも大きな違いだ。魔神ではなく神と呼ばれているし、武神像も魔神を封じ込める為のものではなく神の偶像として祀られており、土地を守る救い主として領民から敬われているのが分かる。鳥居があるのも今作だけなので、お山の魔神、荒神、阿羅羯磨として恐れられていた前作とは違いますよ、と強調しているのだろう。


荒神と守り神の違いは特撮シーンでも明らかで、音楽こそ前作同様悲壮感があるものの、踏み潰す握り殺す刺し殺すといった直接的な暴力がほぼ無く領民達には一切危害を加えないため、容赦ない荒神には(あまり)見えなくなっている。その代わりに守り神らしく、神々しさを感じさせるシーンが多くなっていた。悪人の殺し方も建物崩壊や岩投げ、神通力など間接的なものが多いのでやはり暴力性は薄い。十戒よろしく湖をかちわるシーンもそうだが、私は、爆煙の中で仁王立ちし風で煙を吹き飛ばす場面が最も畏敬を感じたね。煙が漂う海に立つ大魔神の濡れた背中を捉えた場面なんかも正に神様と言いたくなる。
やはり海や水が絡んだ特撮はいい……。


大魔神による救い、そして日を浴びて海に立つ姿を見る人々の顔からも敬いと驚嘆が伺える。前作が荒神、暴力衝動の象徴としてゴジラらしいとするなら、今回は救い主としてウルトラマンやスーパーマンに近い大魔神と言えるだろう。