光光太郎の趣味部屋

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映画:スリー・ビルボード ~人は成長できる~

こんにちは。光光太郎です。

 

今回感想を書いていくのは、いきなり大雪が降ってビビりながらもTSUTAYAに行って借りてきた、2017年公開の名作

 

スリー・ビルボード

 

ネタバレ無しで観た方がいいです。

スリー・ビルボード (字幕版)

 

■雑感

各映画賞で軒並みの高評価、一時期には「真犯人だれなんだよブログ」でも盛り上がった本作をレンタルで観てみると…物凄く面白い!これを映画館で観なかったのは失敗だったなぁ…。

 

とにもかくにもシンプル。どんな映画かと言われれば「人が成長する話だよ」と答えるだろう。本当にそれだけの話だ。事件は解決しないし、劇中起こった問題はどれもこれも社会的解決はしない。しかし、登場人物達は確実に成長し前を向くことが出来るようになる。

憎しみで始まった物語は、主人公のミルドレッドとディクソンが車で笑い合う場面で幕を閉じる。劇的な終幕はなく、笑い合うだけ…ここに人間の崇高さ、目指すべき良きこと、人間賛歌の全てが込められている。

 

■正義と悪の袋小路

とかくフィクションでは分かりやすいカタルシスを求めがちだ。悪役を倒す、真犯人を捕まえる、策略家に一泡吹かす、ムカつく上司に一発かます…だが現実はそうもいかない。「分かりやすい悪」なんてのは目の前にいないし、いたとしても自分が都合よく「悪」に仕立て上げているだけかもしれないのだ。

 

自分を正義に誰かを悪に見立てて行う戦いほど、気分の良いものは無い。自分一人にとっては実に有意義だろうが、周囲の声を無視しているだけであり、単なる八つ当たりに終わることが殆どだ。その戦いによって誰かが傷つけば、また「正義の執行者」が現れる。問題は解決せず隠れた悪には一切近づけず、新しい正義と悪の戦いが巻き起こるだけ…袋小路だ。

 

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■立ち向かうはヒューマニズム

何が原因で起こったのかすら分からなくなるほどの「戦い」の連鎖を止める方法は何か?劇中で最初に「悪」とされる警察署長のビルは「愛」だと記す。思いやる心、優しさで立ち向かうしか術はない。人種差別主義者で暴力家だったディクソンは、心から尊敬するビルの手紙によって、彼の魂を継承した。人は人との出会いによって、どんな状況からでも変わることが出来るのだ。

 

ミルドレッドもまた、連鎖を止める方法を見つけ出す。自らの聖戦が全くの勘違いであったことに気付いた彼女は更なる復讐の手を止めて、敢えて目の前の「悪」の未来を祝福する。ぶち殺せば気が晴れるかもしれないが、彼の恋人は悲しむしもしかしたら元凶でないかもしれない…そんな思いがよぎったのだろう。なんにせよ、彼女は今この場での私刑を止めた。自らの行いを反省し、憎しみの連鎖を止めたのだ。

 

そして最後、前述した車内のシーンにおいてミルドレッドはディクソンに謝罪する。ディクソンは「分かっていたさ」と笑い飛ばし、ミルドレッドも微笑む。序盤では憎しみ合っていた、すぐに暴力を振るっていた二人がだ。人は成長し変わることが出来る。それこそが、現実のどうしようもない悲劇に我々個人が立ち向かえる唯一の希望なのである。

 

bright-tarou.hatenablog.com

 人は成長できる、をテーマにした大傑作アニメ。かなり辛く重いが一見の価値は間違いなくある。

 

■看板のモチーフ

タイトルにもなっている「看板」…つまり看板広告だが、正に今作のモチーフにピッタリだと思う。近年広告の内容に対して様々な視点から批判が飛び大きな問題になることが増えている。広告はただ単に文字や絵を表示しているだけなのに、そこから多様なメッセージを受け取ってしまうのが人間だ。事実は関係なく表現それ自体が問題であるとして、自らを善にし広告を悪として意見を言い合い罵り合い、それを火種にまた別問題で盛り上がる…SNSで何度となく見ている光景だろう。「スリー・ビルボード」そのものではないか!何が問題なのか、自分は何をすべきなのか、落ち着いて考えないと明日は我が身だ…。

 

■〆

さてそろそろ〆だ。

重いサスペンス、苦しいミステリーなんでしょ?なんかよく分からない理由で盛り上がってるし難しそうだし観ないようにしよ…と思っていた自分を殴り飛ばしたくなる程の名作。物凄くシンプルな筋立てで、こんなにも豊かな感情を想起させて、それでいて終わり方が鮮やかでメッセージもドっ直球なヒューマニズムって、そんなの好きになるに決まってるじゃないですか。観た後間違いなく人との接し方が変わる1本。最高でした。

 

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