光光太郎の趣味部屋

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映画:竜とそばかすの姫

竜とそばかすの姫、観た。
現実世界での細田アニメーションは楽しかったが、インターネット、竜の話と鈴の話、そして美女と野獣オマージュがそれぞれ独立してて絡み合ってないのでは。エモーションの高まりがその場その場だけになってるのでは?

そのため、どこにドラマの到達点を持っていきたいのかがよく分からない。現実で声を取り戻すことなのか、母の死を乗り越えることなのか…この2つは本当は同義なのかもだが、本編見る限り2つの見せ場はばらけてるからエモーショナルは連続しない。

また、母の死を乗り越えることは「見知らぬ誰かを助けること」だと思うのだが、果たしてあの2人は「見知らぬ誰か」なんだろうか?理由なく気になり正体探しをして城であれだけやってれば、いくらネット上の付き合いとはいえ「見知らぬ誰か」とは言えない。ここも矛盾しててなんだかなぁ…。


ただ、歌の上手さをキーとする作品で抜群に歌が良いのは凄まじいことだ。U民の反応はちょっと過剰だと思うけど(笑)。あんだけしつこいアニメ泣きを見せた後だからか、現実世界でじんわりと涙していく様を見せられると、泣いた。あそこだけで120分付き合った価値はあった。


感想でよく聞く終盤だが、今作はとても小さい話だと思うので会いに行って鈴とあの子達だけで完結するならありだと思う。鈴だけの視点で。直感でそう思ったなら行動起こしてもいいんだよ映画なんだから。でも、周囲にあれだけ友達と大人がいるのについていかないのは物凄く不自然だし、向こうの父親にガン飛ばしただけで帰ってくるのはどうなんだ?保護してもらうシーンか、なんなら連れ帰ってくるべきだろう。あれじゃあ自己満足で終わってるように見える。結局大人は欠き割りに過ぎず手助けしない存在なのか?

大人や友達父親と、色んな視点を入れちゃうと途端に無理筋なご都合主義に思えてしまい、作家が語りたい話に付き合わされている感覚になる。

なので、竜と鈴の関係のみに物語を絞れば95分位の鋭い傑作になったんじゃないか?学園のアイドルとかカヌーとか幼なじみとのあれこれとか、全部無しにしても成立せんか?そこを削ってもっとハードな話になったのを観てみたいよ。悪役の畜生さ、非難する声の切実さをもっともっと際立たせて欲しい。

もしかしたら青春物語と後半の悲惨な現実とを対にするつもりなのかもだが、それなら父親との関係をこそ描くべきじゃないだろうか。恋愛や青春と、向こうの問題とは全くベクトルが異なると思う。


余計と言ったが、駅でのすったもんだは好きだ。楽器演奏してる時のダンスも、川辺でラブソング口ずさむのも、縁側で談笑するのも好き。なんだかんだ、細田アニメのこういうささいな瞬間は唯一無二の魅力なんだよな。

Uの世界よりも現実世界でのアニメーションの方が何倍も情報量があり魅力的に思える。最初のUコンサートより、直後の鈴の部屋の方がワクワクした。間取り、材質、置いてある小物、本……Uよりも目を凝らして見た。田舎と直売所、中庭のある学校、学生達の表情、犬にコップに……U世界よりも圧倒的に情報密度がつまってる。Uに移るたんび、早く現実に戻らねぇかなと思っちゃったね。