映画:トレイン・ミッション ~娯楽映画の決定版~
「エスター」という映画がある。
怖い子供モノであり、サスペンス映画としてもホラー映画としても大傑作。TVでの鑑賞だったが2時間ずっと画面に引き込まれっぱなしだった。
「ロスト・バケーション」という映画もある。
86分でコンパクトに楽しめることがまず最高。単に水着美女がサメと戦うのではなく、限定された場所と悪化していく体調の中で生き残る、サバイバル映画でもある。しかし娯楽だけでなく、水着美女の成長物語、医者の意味についての物語だ。
「フライト・ゲーム」も。
冒頭から最後までずっと緊張感が持続するし、派手な見せ場もあるのでエンタメとして最高。監督が「エスター」で見せた「主役が悪者にされる恐怖」と、リーアムおじきの「ちょっとどうかしてるオッサン」の風貌がベストマッチ。
これら、まっとうな娯楽ジャンル映画を作り上げたジャウム・コレット=セラ監督の最新作にして最強最優最恐のおっさんリーアム・ニーソン最新作「トレイン・ミッション」(原題は「The Commuter」通勤するオッサンって感じか?)を観てきたので、Twitter感覚でネタバレ感想を書いてみよう。
ひとまず雑感としては、ザ・ジャンルムービーという感じ。1秒たりとも飽きさせない序盤がもう面白い。この監督は前述した3作でも序盤から一気に引き付ける手腕があったが、今回は時制を弄りまくるモンタージュと「超スピードで行き交う人々の中をとぼとぼ歩くリーアム・ニーソン」という面白動画で引っ張ってくれる。
そして緊張感続く中盤。金と引き換えに人探しの指令を受けたリーアム・ニーソンが通勤電車の中を駆け巡る。まずこの、汚く、狭く、暑苦しい「通勤電車」が最高だ。人種年齢性別身長服装しぐさ全てが雑多であり、乗客一人一人に生命力と自分勝手さが漲っていることがよく分かる。電車内でキョロキョロと人間観察をしてしまう経験は誰にでもあると思うが、その感覚を30倍くらい濃密にした人探しシーンは必見だ。必見と言っても序盤から中盤にかけてはそのシーンばっかりだぜ。
終盤では派手さを一挙集中でぶち込み、物語たたみに入る。序中終と見事すぎる「どっかで観た感」が満載だ。だからこその工夫とテーマが光るってのは仮面ライダーやウルトラマン等を観る感覚に近い。テーマは普遍的だが語り口が余りにもストレート過ぎて二昔前の映画っぽさがあるのもジャンルムービーらしい。嵌め込み車窓黒沢清イズム、ヒッチコックイズムも含めてそう思うのかも。というか今回は全体的にヒッチコックオマージュ(「見知らぬ乗客」「バルカン超特急」)が多いように思う。思い返すとジャウム監督(怪獣みたいでカッコいい名前だ)はヒッチコック式サスペンスを相当意識している気がする。
映像面についても書いてみる。狭い電車内で如何に動きある面白い画を撮るか?ってのは、それこそ「バルカン超特急」「ロシアより愛をこめて」を始めとして大昔から工夫され続けている分野だ。最近だと「スノーピアサー」「新感染」電車じゃないけど「フライト・ゲーム」辺りが素晴らしかったけど、今回は「こけおどしカメラワーク」が滅茶苦茶楽しい。ミクロからマクロへ、マクロからミクロへ、前車両から後車両へとグワングワンに動きまくる。撮影監督のドヤ顔が見え隠れするぜ!
そろそろ結びにいくが最後に一つ。ジャウム監督、あんた、「スパイダーマン2」大好きだろ。
さて結びだ。とにもかくにもジャンルムービーとしての面白さは折り紙付きなので、超絶大傑作を観すぎて疲れた映画脳の清涼剤として、サクッと楽しむ映画として、是非見に行って観てほしい。エンドクレジットの工夫はオールタイムベスト級に好きだよ。