光光太郎の趣味部屋

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映画:千年女優

ゴールデンウィーク今敏を一気観したのでツイートを引っ張りつつ感想を。監督した映画では千年女優が一番見易く、楽しかった。クセのないストーリーと絵柄、可愛いヒロイン、抜けのいいラスト。現実と虚構のクラクラ感もネガティブなものではない。


あらすじからして、日本映画ファン心をがっちり捕まれてしまうのだ。映画.comから引用する。

小さな映像制作会社の社長・立花は、かつて一世を風靡した昭和の大女優・藤原千代子のドキュメンタリーを作るため、人里離れた千代子の邸宅を訪れる。30年前に突如として銀幕から姿を消し、隠遁生活を送っていた千代子は、立花が持参した1本の鍵を見て、思い出を語りはじめる。千代子の語りは、いつしか現実と映画のエピソードが渾然一体となり、波乱万丈の物語へと発展していく。


千代子の俳優人生は昭和の映画史そのものを見ているようだ。戦中から戦後へ、戦記ものやメロドラマから歴史活劇、ホームドラマ、そして特撮へと移っていくのだが、日本映画や昭和トリビアが詰まっていて初見はそこにばかり目がいってしまった。スターを中心に手堅い演者で脇を固め同じ布陣で様々なジャンル映画を作るというプログラムピクチャー(意味合ってる?雰囲気で使っちゃってるな)の勢いも、当時の日本映画にあった熱気を感じられてとても楽しい。元ネタは色々だけど、元祖君の名は、蜘蛛巣城新撰組忠臣蔵忍法帖ゴジラ東宝特撮と……ネタ元を話し合うだけでも盛り上がるだろう。次々とジャンルの異なる映像が移り変わっていくのはアニメーションとしてもワクワクするし、編集の区切りがアクションと同期してるのでシンプルに「映像」としても面白い。カオスなアニメーションというのもいいが、編集や動きによってあくまでも映画芸術としてカオスを演出するからこそ、千年女優は見易いのかもしれない。


アニメーション見せ場ならあそこ。鍵の君にときめいていき赤面してしまう千代子が信じられない位可愛い。今敏監督のリアリティあるアニメーションからすると嘘臭い描写だけど、無茶苦茶可愛い。監督作ぶっちぎりで可愛い。
これがあるからこそ、その後何度も出てくる疾走シーンが映えるのだ。転んで立ち上がるのもいい。君の名は。の愛し方さえも~はここからか?
走るシーンにおいて一度転び、踏ん張って立ち上がる描写がいかに魂を震わせるか…。実写でも勿論いいが、アニメーションだと転ぶ前後で描けるものが段違いなのではないだろうか?千年女優、オトナ帝国、君の名は。全部いい。他にあるかな?


お話がシンプルで分かりやすい分、だからこそ、それを映像でどう語っているかに泣いてしまう。映画についてまわる心と人生を、作られてきた映画を用いて語られたら、感無量なんですよ。一番人に薦めやい今敏映画だ。