光光太郎の趣味部屋

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映画感想:グリーン・インフェルノ ~意識高い系学生の因果応報~

こんにちは。光光太郎です。

 

さて今回はお引越し記事のご紹介。前ブログにて好評だった「グリーン・インフェルノ」の感想記事です。R-18なんですが、これが一番アクセス多かったんですよね(笑)。今観ても痛烈な批判精神は見劣りしません。では、また加筆修正殆ど無しでご覧ください…。

 

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新年明けましておめでとうございます!

光光太郎です。

 

2015年も終わりを迎え、2016年が始まってから久しい今日ですが、ひとまず新年のご挨拶とさせて頂きます。昨年から始めたこのブログも、引き続き地道に進めていきたいと思います。2016年もどうか、よろしくお願い致します。

 

さて、それでは新年一発目の記事を書いていきたいと思います。2016年初映画館訪問を飾った作品は

 

グリーン・インフェルノ


です!R-18映画なんで、それっぽいことも言っていきます!ネタバレアリです!

 

グリーン・インフェルノ(字幕版)

 

 

 
■あらすじ

森林伐採の不正を暴くためアマゾンを訪れた環境活動家の学生たち。過激な活動が問題となり強制送還されることになるが、帰りの飛行機にエンジントラブルが起こりジャングルに墜落してしまう。なんとか生き延びたものの、そこで彼らを待ち受けていたのは人間を食べる習慣を持つ食人族だった。学生たちは食人族に捕らえられ、次々と餌食になっていく。(映画.comより引用)

 

■概要

新年一発目にして、R-18映画初体験でもありました。新年最初の映画館鑑賞がこの作品とは、相当キてますね(笑)。

グリーン・インフェルノ」は日本公開が11月の作品だったのですが、私の住んでいる地域では封切りが遅れており(というかやること自体不明だったんです)、まさかの新春映画となってしまいました。私が観た時は、温和そうな初老の夫婦や、これまた超温和そうなおばさんが観に来ていましたね。皆さん、劇場出るときニッコニコでした。

 

この「グリーン・インフェルノ」は「カニバル・ホラー」「食人映画」というジャンルに属した作品で、その名も「食人族」という映画がジャンルの金字塔とされています。「食人族」は「E.T.」公開時、劇場にあぶれた人達が観たことで大ヒットした、ということは有名な話ですね。ほんと俄かには信じられない話ですが…。

食人映画とは、その名の通り「人を喰う」描写で恐怖を描くジャンルです。私は今までこの分野には全く触れていなかったのですが、ホラー映画界の新世代代表イーライ・ロスの監督作であり、話題作でもあったので、今回鑑賞に踏み切ってみました。私はあまりグロ描写が得意では無いので心配でしたが、何とかなりました!というか、とても面白かったです!鑑賞後は顔真っ青でしたが…。

 

食人映画、超絶グロ描写あり、エクスプロイテーション映画等々、エクストリームな映画なんだろうなと思い鑑賞しましたが、とても真っ当な映画作りがなされた傑作だったという印象です。カニバル・ホラー映画としての恐怖描写、全てが腑に落ちる因果応報劇、痛烈なメッセージ性等、太くしっかりとした芯のある映画でした。

 

映画パンフレット 「食人族」 監督 ルジェッロ・レオダート

ETみれなかった人がしゃあなく観てヒットしたという「食人族」

 

カニバル・ホラー

まずは何と言っても、カニバル・ホラーの圧倒的恐怖描写にやられてしまいました。

 

ホラー映画というのは、様々な演出で観客の恐怖を煽る映画です。その恐怖には「精神的恐怖」「エンタメ的びっくり恐怖」等多岐に渡るのですが、今回の「グリーン・インフェルノ」では「自分が食料として扱われる恐怖」が描かれていました。この「自分が食料として扱われる恐怖」には、自分が喰われるという心理的恐怖と、人体調理の超絶ゴア描写によるエンタメ的びっくり恐怖という二重の恐怖が含まれていたんですね。

 

しかし、このカニバル・ホラー演出は全く後味が悪くないんです。恐怖を作る側である食人族に、ホラー映画にありがちな外道的行い、外道的心理というものが皆無だったんですね。彼らはあくまでも文化や生活として食人を行っているので、憎しみや商業的欲望、ドロドロな人間関係から殺人を行っているわけではないんです。食べるために殺す、生活に根付いた宗教行為として殺す等、彼らの行動原理はいたってシンプル。そのシンプルさで嘔吐感を感じるほどの恐怖を感じるんですが、シンプルだからこそ後味はすっきりさっぱりとした印象でした。

 

またカニバル・ホラー描写ではないのですが、飛行機事故による一連の人死にシーンも痛烈な場面でした。不謹慎ですが、とにかく楽しい場面でしたね~。ホラー映画としてのサービス精神に満ち溢れていたんですよ!流石イーライ・ロス

 

飛行機回転中にゲロを吐くデブ、機体後部と共に吹っ飛ぶパツキン、木がぶつかって頭部半分がパックリいくパイロット、ゆっくり回転するプロペラに頭を削がれるウェイ…描写自体はショックシーンですが、心は大爆笑&拍手という感じでした。こういう悪趣味描写は映画的サービスでもあるのですが、事故現場の紛れもない現実を知ることが出来る場面でもありますね。

 

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同監督による、悪趣味映画の決定版!

 ■真っ当な因果応報

カニバル・ホラー描写で圧倒的恐怖を与えてくれた「グリーン・インフェルノ」なんですが、作劇面演出面共にとても腑に落ちる、因果応報がしっかりとした映画だったんです。ホラー映画に限らないことですが、演出優先でご都合主義ばかりという映画が多くある中でこの映画を観てみると、驚きですよ!イーライ・ロス監督の手腕の高さ、そして実直さを垣間見ました。あんなに悪趣味なのに…。

 

グリーン・インフェルノ」では、映画中に起こることには必ず理由や前兆がありました。意識高い系大学生軍団「ACT」は物事の本質を見なかったために喰われる事態になり、処女でありフルートのアクセサリーを持っていたからこそ主人公は助かり、クズであっても「人」を見捨てたからこそ最後の追及がありました。

 

正しいことをした人も何かしら負の因果応報があり、クズだったとしても正の因果応報がある。この映画では全て平等に結果と原因が用意されているんですね。それは演出面でも同じで、前半に大学講義のシーンがあるんですが、その場面があることで後半のショックシーンの恐怖感が生まれていましたし、主人公の取って付けたような正義感と食人族たちの風習説明にもなっていました。正に全てが腑に落ちる、新設設計な映画でした。

 

 ■クソ大学生描写

そして「グリーン・インフェルノ」を話す上で欠かせないのは何と言っても痛烈な「大学生描写」ですね。意識高い系な人全般に向けた痛烈な批判が、この映画にはこめられていました。

 

グリーン・インフェルノ」では主人公ジャスティンと意識高い系大学生軍団「ACT」の面々の様子が描かれているのですが、これが「大学生」の嫌な部分を凝縮したような人物達なんですね。これは自分にも多分に当てはまる部分が多く、他人事ではありませんでした…。

 

嫌な部分を簡単に言うと「おごり」からくる「過信」なんです。主人公もACTの面々も、自分が高尚な知識を勉強しているというおごりを持っています。そのおごりから、何か正しいことをしたい、褒められたいがために、何か絶対的な「悪」を見つけて叩くという行動に向かっていくんですね。彼らのこのあまりにも分かりやすく薄っぺらい欲求は、企業人たちに徹底的に利用されるわけなんですが…。

 

そして主人公ジャスティンに顕著なのは、自分は、自分だけは正しいことを考え実行しているというおごりでした。これは高圧的な父への反発心からと考えることも出来ますが、限度が過ぎました…。そしてこのおごりは、最後の最後まで続きます。

 

彼女はとてつもない恐怖を与えられたにも関わらず食人族を守る事を選び、自分以外の面々は事故死し、危機を現地民族に助けられたという嘘をつきました。この嘘=正しい行いによって森林開発はストップし、ACTの面々も英雄的死という扱いになり、全てが丸く収まったかに思えました。しかし彼女が見捨てたアレハンドロの妹から「GPSで兄の姿が確認できる。話がしたい。」という連絡がきます。正しい行いに見えた嘘も見捨てるという行為も、アレハンドロの妹にとっては絶対的な「悪」でしかなかったんですね。

 

グリーン・インフェルノ」で描かれている程に極端ではありませんが、これらのおごりや正義感描写は、私自身にも身に覚えのあるものばかりです…。自らの虚無感からありもしない力を理由におごりをおぼえ、その虚無感を埋めるために誰かを叩き自分を正しいと示したい…そう考えることは少なくありません。目立ちたいがために内容の伴わない行動をするというのもあるあるです…。一大学生として思うところの多い映画でした。

 

 

カニバル・ホラーとしての圧倒的恐怖描写を打ち出しつつ、因果応報がしっかりした堅実な映画作りを行い、痛烈なメッセージを打ち出す…。娯楽映画として不満足が全くない、とても見やすく楽しみやすい映画でした。R-18描写も中盤のやたらと長い人体調理シーンがゴアのピークで、それ以降は割と安心して観ることが出来たのも嬉しかったですね。調理シーンでは本当に退席しようと思ったので…。胃の中にポップコーンしか入れなかったのは正解でしたよ…。

 

 

何者

違った意味でクソ大学生描写を見せつけられる一本

 


■個人的感想

面白いと思った点は次の3点です。

①食人族の生活風景

②ピンポイントで終わるショックシーン

③俗っぽい演出多数

 

①食人族の生活風景

前述した通り「グリーン・インフェルノ」では食人はあくまでも文化として扱われています。なので食人族は気の狂った殺人鬼としてではなく、掟と習慣に従って(彼らとして)真っ当に生きる集団として描かれていくんですね。あまりにもショッキングな人体調理シーンも、どこか宗教的な目と舌の調理が終わった後、バッサバッサと手際よく調理していきます。そして肉に塩を揉みこみ、燻製させてから皮をはいで食べていました。正に料理という文化。その食人描写以外にも、宗教的なものを感じる装飾や日々の仕事の様子などが丁寧に描かれていました。実際に現地の方に演じてもらったというだけあって、その生活や反応は自然そのもの。食人族という存在がいる!あの場に生きている!と感じることが出来ましたね。しかし、漏らすことはやっぱり恥ずかしい事なんですね(笑)。

最近分かったんですが、私は言語だったり生活だったり何かしら独特な文化描写があるものが好きなのかもしれません。

 

②ピンポイントで終わるショックシーン

私は行き過ぎたグロ描写は得意ではないのでとても心配だったのですが、前述した通り極端なゴア描写は中盤以降無いので安心して観ることが出来ました。まぁ、ものすごく痛そうなシーンはいっぱいあるんですけどね(笑)!

 

③俗っぽい演出多数

正に俗物映画というか、普通の映画では観れない聞けないものがてんこ盛りでした。差別的な発言や下ネタ、モザイク無しの下ネタ(爆笑)、排泄物ネタ、薬物ネタ等、これでもかと世俗的な要素が盛り込まれていました。こういうものは日本ではあまりみられないので、とても新鮮でしたね。

 

 

続いて残念だった点について書いていきます

①脱出シーンがさっぱり

②アレハンドロの下半身真っ黒案件

③ネタバレしまくってしまった…

 

①脱出シーンがさっぱり

最後に主人公は食人族から脱出&彼らを守ることになるんですが、その場面がかなり淡泊というか、さらりと進んでいくんですね。逃がしてくれた子供とのやり取りは良かったのですが、脱出から保護までの流れはもうちょっと盛り上がってもいいのかな…と。まぁしかしこれはネタバレを見まくって臨んだ自分に大きな原因がありますね…。

 

②アレハンドロの下半身真っ黒案件

最終盤に生き残ったアレハンドロが映っている衛星画像が映るのですが、そこで何故かアレハンドロの首から下が真っ黒なんですね。あれはなんだったんでしょうか…。まさか、狂ってしまって自分のアレを…?どうにも気になってしまうところです。

 

③ネタバレしまくってしまった…

これは「ヴィジット」の時にもやってしまったのですが、こちらの地域でやらないものと思ってしまい、事前にとことんネタバレを見てしまっていたんです…。だって公式サイトにも載ってないんですよ!?やらないと思うじゃないですか!

ネタバレを見てしまったので、答え合わせの様に見てしまったんですね…。これに懲りて本当に観たい映画はネタバレを絶対に見ず、こちらの地域でやると信じて待つことにします…。

 

 

■〆

いや~、凄惨なショックシーンあり、堅実な物語あり、痛烈なメッセージあり、下世話さもありと、今まで観たことないものが観れた、とてもいい映画体験でした。自転車で往復100分漕いで観に行ったかいは十二分にありましたね。強烈な映画で始まった2016年ですが、今年もなんとか色々観ていきたいと思います!

 

(因みに、この映画館では3月にウルトラマンを観る予定です)