映画:きみの瞳が問いかけている
とても丁寧に積み重ねられていく演出や思いきりのいいジャンプカット、見事なアクション、重さと軽さのバランス感覚……ひたすらに「いい映画を観た」という感動に浸った。
思い思われふりふられの監督らしく、深刻な問題を扱うミニシアター系映画と、大衆向け王道エンタメとの非常に上手いバランスをとっている。重すぎる現実で終わらず、かといって軽すぎるファンタジーに終始しない。
全くボックボーンの分からない2人の男女が徐々に距離を近づけていく様を最初にかなりじっくり尺とって描くんだけど、演技衣装台詞全部に無駄なく情報がつまっているので全然飽きないし、ズレ漫才みたいなやり取りは素直に楽しい。しかしこれは吉高由里子と横浜流星の魅力あればこそだろう。
視覚障害者を主役に据えた大傑作と言えば「見えない目撃者」だけど、あれと比べれば今作はかなりソフトだし首を傾げる描写もあるが、それでも敬意を持って描かれているとは思うし、何より「見えない」(正確には見えにくいだが)ことを活かした作劇はしっかりと笑いと感動、そして悲しさを生んでいた。
お話それ自体はどっかで観た聞いたもののパッチワークだけども、それ全部俺の好きなやつ!!!!!だったので全く問題ない。料理の仕方も出し方もスマート。締めの演出もさりげなく。