光光太郎の趣味部屋

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映画:BITE

BITE、観た!超絶大傑作!!

モンスター映画を傑作にする手段に「ジャンルにモンスターを加える」がある。痴話喧嘩のディセントが好例だが、今作も「神経症スリラー➕モンスター」として大成功。デルトロ並みに凝ったSFXも凄いが、真っ当なスリラーを手堅く構築しているからこそモンスターが活きる。

主人公のケイシーは結婚を控え、友人と独身最後の旅行へ赴くが「BITE」されてしまう(ここでタイトル出るのが最高)。帰国後結婚への不安から酷く落ち込むが、噛まれた傷口から変化が始まっていて…というあらすじ。ケイシーはモンスターへと変貌するが、それは追い込まれた精神の表出に見える。

モンスターが何かの比喩であることは恐怖表現に物語的な意味を持たせることになるので、驚かしのシーンだとしてもストーリー進行は止まらない。荒唐無稽展開になっても、切実な背景を持つ神経症スリラーであることは変わらないのだ。今作はモンスターでストーリーをテリング出来ている。

主人公が何故結婚に向けて悩んでいるのかの根本的な原因は分からないものの、要因は多数あるしそのどれもが共感しやすいから感情移入はそがれない。姑も無神経な彼氏もトコトン彼女を追い詰めていくし、友人の思わぬトラップが発覚したらもう止まらない(冒頭のビデオがいい伏線に)。

神経症スリラーを成立させる手順を手堅く抑えて、構成で面白がらせる工夫もある。撮影も安っぽくないし冒頭以外は殆どアパートだけで進行するのに画で退屈させない…。モンスター映画だからといい加減に撮るんじゃなく、映画で物語を語るのに必要なことを一つ一つ丁寧にやってるから、面白いんだ。

とここまでお膳立てしても肝心のモンスターや恐怖表現がダメじゃいかんのだが、これがデルトロ映画並みにディティールに拘ったもんで見応え抜群。ここまで「汚さ」に特化したのは「マンホール」位しか思い付かないが、あれよりもバイオよりの汚さというか、虫とか爬虫類の住処の汚さというか、、

モンスターも勿論凄いが(主人公役の人が特殊メイクで演じてるらしい。ガッツ。)何よりもあの部屋と卵よ。照明も相まって素晴らしい異空間に仕上がっていた。徹底的な汚し美術。VFXではなくSFXであることも好きだ。多分CGじゃないと思うんだけど、、生理的嫌悪感を煽りまくる。

白眉なのは主人公が怪物へと心理的に「変身」する瞬間だろう。ワンカットで、ただ振り向くという演技だけで、特殊メイクもほぼなしで見事に表現していた。ああいうのを見れるだけで特撮ものってのはいいんですよ~。(思い出したのは狂い咲きサンダーロードだけど)

人間がモンスターへと変貌するモノで最も抑えるべき、いやさ、何か決定的に変わってしまうという物語全般において、心が変わる瞬間てのはいっちゃん大切なんですよ。そこを分かってんだよこの監督は!素晴らしいぜ。